政治

2023.03.15

「ロシア軍兵士1日に1090人死亡」というウクライナによる主張の妥当性

Narciso Contreras/Anadolu Agency via Getty Images

このノートは大隊規模の突撃部隊の兵力を毎日集計するのに使われたようだ。ノートによると、3月1日に100人のロシア軍兵士がウクライナの陣地を攻撃した。そして帰ってきたのはわずか16人だった。

その2日後に兵士116人が出撃し、生き残ったのは23人だった。3月4日には103人が陣地を出て、戻ってきたのはわずか15人だった。翌日は攻撃した115人のうち3人が戻ってきた。もしノートのメモが信頼できるものであるなら、その部隊は5日間で377人の兵士を失ったことになる。

つまり、ロシア軍が時にウクライナ各地で1日に計1000人の兵士を失うのは考えられるということだ。

西側諸国の軍隊は同じような状況下ではほぼ間違いなく戦いを続けないだろう。「このような犠牲者が出ているのに、ロシア軍の指揮官が平然と兵士を追加投入するのは理解できない」とハートリングはコメントした。

もちろんロシア軍は西側の軍隊ではない。しかし歴史に照らし合わせれば、ロシア軍にも限界点がある。

フォーブスのコラムニストで、ウクライナ国防省の改革チームの元メンバーであるヴォロディミール・ダチェンコは先月、いくつかの戦争における全体の死傷率を分析し、驚くべき結論に達した。ダチェンコの分析によると、ロシア軍は平均してウクライナで毎日、配備している兵力の0.144%を失っている。

この数値は現代史上最も高い死亡率ではないことをダチェンコは発見した。しかし戦いに敗れた軍の死傷率が高い戦争、たとえば2020年のアルメニアとアゼルバイジャンの領土をめぐる軍事衝突や1939年のソ連とフィンランドの戦争などはすぐに終結した。前者はわずか44日間で、後者は104日で終結した。

ベトナム戦争や米国のイラク侵攻、ソ連のアフガニスタン侵攻など、長期にわたる戦争では敗戦側の1日の死者数は往々にして配備した兵士の0.002%あるいは0.003%だった。

1日あたりの平均死亡率が0.1%を超えると、その軍隊は数カ月の戦闘の後、撤退するか崩壊する傾向がある。ただし例外がある。1994〜1996年のロシアのチェチェン戦争では630日もの間、毎日0.113%の兵士が死亡した。

ロシア軍がウクライナで1日に1000人もの兵士を失い続けることは、それほど長くは続かないことを歴史は教えてくれる。もつとしてもおそらく数カ月だろう。ロシアが失った兵士を補うために特別措置を講じ、前線部隊の規律を強化し、おそらく最も重要なことに国内メディアの報道をコントロールすれば、1年はもつかもしれない。

ロシアの最近の死傷者数は驚くべきもので、こうした損失はロシア大統領府の戦争をめぐる全般的な動きに深刻な影響を与えるかもしれない。最も劣勢に立たされている場所でウクライナ軍が撤退せずに残って戦うことを選択したのはこのためかもしれない。そこではロシア軍の兵士が最も多く死んでいる。

その場所とはバフムートだ。ロシア軍が最終的な終焉に向かって進んでいるかもしれない戦場だ。

forbes.com 原文

翻訳=溝口慈子

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