未来のありたい姿を考えてもらう
2つ目の難所は、契約社員、パート社員のキャリア形成支援だ。有期契約で働く社員は、長期的なキャリアの展望を描きにくい傾向がある。そのため「とにかく目の前の仕事をこなす」という心理状態になりやすいが、それでは仕事へのモチベーションが高まらないまま日々が過ぎてしまいかねない。
そこでD&I担当者には、契約社員、パート社員に対して自らのキャリア形成に主体性を持つことを促す施策を検討してみてほしい。
私は前職でこの課題を解決するため、人生戦略を参加者自身が立てる「ビジョンメイクセッション」というキャリアイベントを社内外で開催していた。組織に会社の中長期的なビジョンの浸透を図ると同時に、契約社員、パート社員を含む従業員に、自分自身の1年後、3年後、5年後のありたい姿を考えてもらうものだ。
「自分はなぜこの会社にいるのか」「この会社でどうしたいのか」と自身に問いかける作業は、従業員が自らの本心に気づくきっかけになる。すると業務に目的意識を持つようになっただけでなく、「正社員になりたい」と雇用形態の変更を申し出る契約社員も現れた。
契約社員にパート、フリーランスと、今や誰もが働き方を選べる時代になった。だからこそ企業として、従業員の望む暮らし方、生き方に寄り添えるオプションをしっかりと用意し、従業員が自らの選択によって不利益を被らない状況を整えること、その結果として業績を伸ばしていけるようにすること。そうした姿勢がこれからの企業には不可欠である。
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