医療従事者の燃え尽き症候群が急増している。米医学専門誌『
Mayo Clinic Proceedings(メイヨー・クリニック紀要)』に掲載された研究によれば、米国では2021年、医師の5人に3人が、燃え尽き症候群の症状が1つ以上あると訴えた。『
繁栄する医療人材の構築に関する2022年米医務総監諮問報告書』は、燃え尽き症候群について「極度の感情疲労と離人感(シニシズムなど)、仕事における個人的達成感の低さを特徴とする職業病」と定義している。燃え尽き症候群はパンデミックによって悪化しているが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前から存在し、医師以外の医療従事者にも影響している。
全米医学アカデミーによると、2019年だけで看護師の35~54%が燃え尽き症候群の症状を訴えていた。
この公衆衛生上の危機を緩和するために検討すべき戦略を、いくつか紹介する。
感謝の文化を育む
VatorNewsは、燃え尽き症候群を訴えた米国の臨床医の69%が「きちんと評価されていないと感じる」と回答したと報じている。看護師、ソーシャルワーカー、薬剤師、管理者、医師などの医療従事者は、パンデミックの間、新型コロナに苦しむ何百万人もの米国人をケアするため、愛する人との時間をはじめ多くの犠牲を払ってきた。臨床医の10人に約7人が自分たちの仕事は評価されていないと感じているという事実は、まさに憂慮すべきことだ。
医療制度は、医療に携わる人々の強力な擁護者として、たゆまず機能しなければならない。感謝する文化を構築することは、医療従事者が十分な有給休暇を取得でき、申請どおりに有給休暇を利用できるようにすることだ。また、米連邦政府は医療従事者への学生ローン免除プログラム提供を検討すべきだ。学生ローンは米国における消費者債務の
原因第2位で、医療従事者は高い負担に直面しているからだ。このような戦略は、医療従事者の献身的な仕事にふさわしい感謝と評価を育むのに大いに役立つと考えられる。
ウェルネス推進に特化したリーダーシップを確立する
ほとんどの医療機関では、最高臨床責任者(CCO)、最高財務責任者(CFO)、最高医療情報責任者(CMIO)といった役職を設けている。同様に、最高ウェルネス責任者の採用を検討するべきだ。この役職が担う責務は、米医学誌『New England Journal of Medicine(ニューイングランド医学ジャーナル)』の姉妹誌『
NEJM Catalyst』に掲載された記事で、すでに明確に定義されている。すなわち、職場のストレス要因の特定、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に満たされた健康な状態)を支援するプログラムの作成、燃え尽き症候群に対抗する医療従事者のニーズへの対応などだ。最高ウェルネス責任者という役職を設けることで、燃え尽き症候群に関する問題が真剣に取り上げられるようになり、個々の医療従事者のウェルビーイングを雇用主が重く見ているというメッセージも発信できる。