一昔前ならスキー場が冬のシーズン以外に十分に稼ぐことは不可能に思えたかもしれないが、一部の地域ではそれが現実に起きている。1924年に第1回冬季オリンピックが開催されたフランス・シャモニーは収益源の転換に成功し、今ではリフト料金の40%を「オフピーク」期間の5〜10月に稼いでいる。
統計によると、シャモニーのリゾートの約半数が2080年までに降雪をあてにできなくなる。欧州北部の一部ではかなり雪解けが進んでいて、数千年ぶりに氷が溶けた場所で考古学者はスキーやウェアを発見している。
2021年の報告によると、世界中でなんと毎年4億人がスキーリゾートを訪れており、その半数がアルプス山脈に向かっている。オーストリア、フランス、イタリア、スイスなど中央ヨーロッパの国々にまたがるこの山脈は世界の全スキーリゾートの3分の1を占めている。
気候変動とそれにともなう世界の気温の上昇により、近年、欧州のスキーリゾートの多くがシーズンを通して人工雪に頼らざるを得なくなっている。しかし、経済的な観点からもこれは持続可能ではない。電気料金の上昇により人工雪の費用は1立方メートルあたり2ユーロ(約286円)だったのが今では3〜7ユーロ(約429〜1001円)になっている。
イタリアの環境保護団体Legambiente(レガンビエンテ)の新しい報告によると、イタリアのスキーリゾートの10カ所のうち9カ所は人工降雪機に頼っており、そのために142の人工湖を使用しているという。これは人口100万人の都市に給水するのに十分な量だ。
1961〜2018年にイタリアのリゾート地の平均気温は3度上昇し、その間に249のリゾート地が閉鎖され、84のリゾート地が降雪量の変動に応じてスキーシーズン中に不定期に営業したり休業したりしている。
アルプスの雪解け水の不足はイタリア最大の農業地域の1つを潤すポー川の水位の低下にもつながっている。農家は水をあまり必要としない作物を探す必要に迫られており、イタリアの山岳地帯にとって喫緊の多様化の教訓となっている。
また、オーストリアのリゾートの70%が人工降雪機に依存しており、この割合はスイスでは50%、フランスでは39%、ドイツのゲレンデでは25%だという。これは明らかに持続不可能なアプローチであり、標高2000メートル以下のリゾートは確実に今後10年以上にわたってスキー環境を提供し続けることはできないだろう。
昨シーズン、フランスのスキーリゾートの半数が休業を余儀なくされたことから(雪がまったく降らなかった日が32日もあった)、より持続可能な選択肢が唯一の道だ。
欧州各地の先見の明のあるリゾートは細長い平底そりであるトボガンのコースを開設したり、洞窟探検や冬山サイクリング、ガイドつき乗馬などのアクティビティを始めたりして多様化を図っている。米メディアBloomberg(ブルームバーグ)が報じたように、バイアスロンやサイクリングレースを開催したり、テーマパークを作ったりするリゾートが今後生き残ることになるだろう。
(forbes.com 原文)