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2023.03.16

要介護の原因「フレイル」状態、社会交流が高い人ほど低リスク

Getty Images

長引くコロナ禍で外出の機会が減り、「フレイル」状態に陥るシニア層が増加している。フレイルとは、加齢による心身の活力の虚弱を意味し、介護が必要な一歩手前の状態のことを指す。

ソフトバンクは2月25〜26日、60歳以上のシニア男女1000名を対象に、「シニア世代の健康に関する調査」を実施。フレイルリスクが高いシニアと低いシニアで、生活態度やコミュニケーションの違いなどを調べた結果を発表した。

まず、シニア1000名にフレイル度を測る「イレブンチェック」(※)を行ったところ、全体の31.7%が「フレイルリスクが高い状態」、26.1%が「中程度のリスクを抱えている状態」だという結果に。合わせて6割近くがフレイルリスクが中程度以上の状態にあることが分かった。

※…日常生活を振り返る11の質問を通して、「栄養」「口腔」「運動」「社会性・心」4つの指標でフレイル度を確認できるチェック。東京大学高齢社会総合研究機構(IOG)の飯島勝矢教授の研究チームが考案した

さらに、日常的な楽しみの有無について尋ねたところ、フレイルリスクの高いシニアのうち16.4%が「特にない」と回答。その割合は、同リスクの低いシニア(2.8%)を大きく上回り、6倍近くとなった。

日常的な楽しみだと思うものについては、フレイルリスクが低いシニアの共通点として、「友人との会話」(45.3%)などのコミュニケーション機会や、「スポーツ」(32.5%)「食品日用品以外の買い物」(42.4%)といった外出機会を、フレイルリスクの高いシニア(各23.3%、9.5%、23.7%)よりも高い割合で日常的な楽しみだと捉えている傾向が見えた。

また、家族以外の知人と会う頻度について聞いたところ、フレイルリスクが高いシニアの約半数(48.9%)が、家族以外の知人と1カ月以上も会わない生活を送っていることが判明。その割合は、同リスクが低いシニア(16.4%)の約3倍に。同リスクが低いシニアは、約3人に1人(32.9%)が週3回以上、家族以外の知人と会うと答えており、その割合は同リスクが高いシニアの2倍超に。両者には大きな違いがあることが分かった。


他にも調査では、フレイルリスクが高いシニアの4人に1人以上(29.7%)が、「外出するのが億劫で、必要最低限しか出かけない」生活を送っていることや、3人に1人以上(34.7%)が最近の気分として「億劫だったり、面倒くさいと感じることが多い」と回答していることが判明。フレイルリスクが高いシニア層は同リスクが低いシニア層より、日々の意欲を失っている傾向が強いことが見て取れた。

フレイル対策の専門家である筑波大学 山田実教授は、フレイル対策に重要な要素として「運動」「栄養」「社会参加」の3つをあげ、下記のようにコメント。

「運動はもちろん、栄養は特にタンパク質をしっかり摂取することが重要だと言われています。また人との交流をしっかり取っていくことも、結果としてフレイル対策に繋がっていくと考えられています。

例えば『運動していないからしたほうがいい』と無理をしてフレイル対策をしていくというのは長続きさせるのが非常に難しいため、無意識で行えるフレイル対策を推奨しています。無意識でのフレイル対策というのは、生活の中で様々な楽しみを見つけて積極的に外に出て行っていただくといったことを指します。外出することで結果的に身体を動かし、お腹も空くので栄養も摂取することになり、無意識のままフレイル対策ができている状態に近づけると考えています」

さらに、山田教授はフレイル対策を全国的な取り組みとしていくにあたり、次のような問題を指摘した。

「地域の高齢者の方が主体的に集まってグループ活動を行っていくといった、外出の動機となる自治体レベルでの『通いの場』がフレイル対策として非常に効果があると考えられていますが、コロナ禍で非常に活動がしにくい状態であるなど、なかなかそのような活動が広がらないという課題があります。

またそのような地域の活動の場に参加できる方はあくまでまだごく一部であるので、それ以外の方々がどのような形で健康維持に努めていけばいいのかということをいかに周知させるか、いかにご理解いただくかというところが大きな課題となっています」

3月13日から、いよいよマスク着用が個人の判断にゆだねられるようになった。周囲でマスクを外し始めると、原則マスクの着用が必要だった頃に比べて、感染リスクをより強く感じ、外出や外部とのコミュニケーションを控えるシニアもいるかもしれない。

これ以上、フレイル状態のシニアを増やさないために、国や自治体、さらには家庭レベルで予防策の実践が求められている。

プレスリリース

文 = 大柏真佑実

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