6回目のスモール・ジャイアンツアワード2022-2023では、北海道北見市の「環境大善」が「ローカルヒーロー」賞を受賞しました。牛の尿を原料に消臭液や土壌改良材を手がけ、前人未到のアップサイクル事業を行う企業ですが、窪之内誠社長はある悩みを抱えています。
それは、「事業が拡大していくにつれて、スケールアップと設備投資のタイミングをどうするか?」という問題です。
多くのスモール・ジャイアンツたちが抱える悩みを解決すべく、Forbes JAPANは「オンライン師弟相談会」を実施。相談相手は、窪之内社長が“師匠”として尊敬してやまない「COEDOビール」を手がける協同商事(埼玉県川越市)の朝霧重治社長です。
牛の尿とビール──。危険な香りのする並びですが、「農業」や「発酵」という事業の共通点を持つ2人の社長の話題は、意外な方向性へと進んでいきました。
「発酵」が生産拡大のボトルネックに
環境大善・窪之内社長(以下、窪之内):朝霧さんに実際にお会いしたのは2022年12月、Forbes JAPAN主催のGALAパーティーでしたね。ですが、僕自身が会社のブランディングを始めた頃に中川政七商店十三代の中川淳さんと「COEDO」ビールなどのデザインを手がける西澤明洋さんの共著『ブランドのはじめかた』を読んで感銘を受けたので、自分にとって朝霧さんは“師匠”といっていいほど、かなり大きな存在なんです。協同商事・朝霧社長(以下、朝霧):師弟関係だなんて大袈裟な立場であるとは思いませんが、クラフトブルワリーの根っこも「農業」です。御社では肥料や土壌改良材などを手がけられていますし、畜産も私たちのビジネスとそんなに遠い話じゃないんですね。GALAパーティーの二次会では隣の席で、いろんなお話をさせてもらいました。
窪之内:『ブランドのはじめかた』で、COEDOをブランディングし、売り上げが3倍になったと拝読しました。弊社も3年半かけてリブランディングを実行し、2021年、2022年と商品リニューアルをしておかげさまで好調に推移しているのですが、1点悩んでいることがあります。
それは、事業のスケールアップや設備投資のタイミングです。牛はたくさんいて液量もたくさんある。ですが、ビールのように発酵に時間がかかるんです。COEDOビールでは倍増計画があったそうですが、生産体制はどんなタイミングで整えられたんでしょうか。
朝霧:私たちの共通点は「発酵」なんですね。おっしゃる通り、時間がかかるじゃないですか。そこがボトルネックになっていて、どんなに売れても発酵槽など設備のキャパシティが生産能力の上限を決めることになる。
実は先代が経営していた頃、地ビールブームが起こって生産が追いつかなくなった時に、ビジネスチャンスに賭けて20倍の設備投資をしているんですね。結局その判断が、ビール事業が苦境に陥った一番の理由となった。
そんなことやらなければ良かったと、気づきまして。でもあの拡張性があったからこそ、今のCOEDOがあります。この苦い経験から、私は「拡張性」を大切にしています。