そこで、将来を見据えた食料の生産について、Soilgenic Technologies LLCのCEOであるJeff Ivan氏と立教大学サステナビリティ学部教授でSoilgenic Technologies LLC.の取締役も務めるPatricia Bader-Johnston氏に伺った。
食糧生産に使用できる土地は残っていない
まず、地球規模で、人類というものを見ることで現状を理解していきたい。地球上の生物のどの程度が、人類と人類に関係する生き物なのか、ご存じだろうか。Bader-Johnston氏は、以下のように語った。
「地球上の生きとし生けるもののうち、質量でいえば 90%近くが人間やペット、牛、豚、鶏で占められています。 つまり、『野生動物』と呼ばれるものは 10%以下しか残っていないのです。現在、人間1人に対して牛が約2頭、人口が80 億人以上ですから、160億頭です。 2050年には人間の人口が 100 億人に達すると予想されているので、何頭分になるか考えてみてください。すでに、アマゾンの熱帯雨林の3 分の1以上が、主に牛の放牧のために伐採されています。地球上に残された耕作可能な土地は、地球表面の約9%に過ぎません。」
地球環境に配慮した「農法」の見直しが求められている
問題は土地の量だけにとどまらない。現在の農法では、環境への悪影響も指摘されている。Bader-Johnston氏によると、温室効果ガス排出量の24%は農法に起因するもので、 ニュージーランドのように歴史的に自然のままの川がある国では、酪農場の過剰な集中が、国内のほぼすべての川の窒素濃度を、安全とされるレベルよりも10%以上高くする原因となっているという。
食料をどのように栽培するかに焦点を当てて考えてみよう。
現在、農業の効率を高め、より少ない土地でより多くの食料を生産できるようにする、クライメート・スマート・テクノロジーや細胞培養による食肉生産などの限られた土地でより多くの家畜を飼育する必要性を減らすことができる技術も数多く出てきている。これは、将来の人口増加を考える上でも、気候変動を1.5 度以下に抑えるために、温室効果ガスを削減することに注力する上でも、注目に値するという。