100億人という人口を前にして、私たちは合成肥料を使うか、人を養うかの選択を迫られている
最近では健康志向な方も増え、オーガニック農法に基づいた食品を買い求める人々もいるが、人口増加という観点から見るとどうなのだろうか。Bader-Johnston氏は「初期の農業はすべてオーガニックでしたが、当時使われていた肥料の栄養価が低かったため、作物の収量は貧弱でした。有機はとても重要なのですが、現在使われている有機肥料の大部分を占める下水をリサイクルした汚泥には、大量のマイクロプラスチックやその他の化学物質が含まれていることが判明しています。これらが植物に吸収され、私たちはそれを消費しているのです。
また、100 億人を養うために必要な膨大な量の作物を、有機物を施し、地域の再生農法を用いるだけで育てられると考えるのは、かなり困難なことです。100億人という人口を前にして、私たちは合成肥料を使うか、人を養うかの選択を迫られています。 もし、合成肥料の製造につきものの問題、つまり排出ガスをなくし、プラスチックを使わず、土壌の健康を損なわず、 水系への窒素の流出をなくすことができるならば、効率向上肥料(EEF)はかなり説得力のある製品ではないでしょうか」と語る。
効率向上肥料(EEF)の導入は簡単なのか
ここで気になるのは効率向上肥料(EEF)の導入の難易度だ。せっかくの良い技術も、地球規模の課題解決をするならば、広まらなければならない。Ivan氏は、Soilgenic社の技術は肥料のコーティング剤や添加剤として簡単に導入できるという。特許により、肥料製造の上流工程で処理を可能にしたことで、 低コストの「気候変動対応型窒素肥料」ができあがった。これを他の肥料と混ぜて農家に販売することで、農家は、見た目も扱いも従来のものと変わらない肥料を手に入れることができる。ただし、温室効果ガスの発生は90%少なく、土壌の種類や農法にもよるが、平均16%収量が増加する。農家にとっては、投資に対して6倍のリターンが得られると同時に、環境にやさしい肥料を使用できるようになり、プラスに働くというのだ。
また、肥料工場に追加するのは簡単で、生産工程で効率向上技術を肥料に吹き付けるだけでよく、すべての尿素窒素工場で、この技術を簡単に採用し、クライメート・スマート窒素を実現することができるという。Soilgenic社は、年間 700mmt にのぼる肥料からの温室効果ガス排出を削減するための、迅速かつシンプルなソリューションを、各国政府が非常に迅速に行動し、これをすべての肥料に義務付けることを望んでいる。