食糧生産に使える土地はもう残っていない?

80億超の口をまかなう注目の肥料 photo by shutterstock.com

では、現在の農法がどのような流れで生まれ、どのような影響を与えてきたのだろうか。Ivan氏は次のように語った。

「現代の農業は、土地がより多くの食料を生産できるようにする肥料に依存しています。元々、1800年代後半の農業用肥料は天然肥料でした。しかし、その供給は枯渇し、作物の収穫量は制限され、人口の増加とともに、世界は食糧不足でした。 何百万人もの人々が飢え死にする事態に陥ってしまいました。

1900 年代初頭になり、アンモニアの大量生産を可能にしたハーバー・ボッシュ法と合成肥料の開発により、人類の人口は今日のような数まで増加することとなりました。 しかし、これら肥料は効率が悪く、環境に対する損失につながることもあります。

現在、私たちはさまざまな問題に直面しています。 例えば、農業による温室効果ガスを考えた場合、排出量の70%は肥料に関連しています。生産と輸送で 40%、肥料の使用で60%。これは年間約12億5000万トンの温室効果ガスを排出していることに相当します。 窒素肥料を使用すると、土壌中のバクテリアによって安定した窒素が硝酸態窒素に変換され、この過程で亜酸化窒素(N2O)が生成されるのですが、この排出物は、C02の排出物の265倍もの温室効果等の威力を持ちます。

さらに、肥料の非効率的な使用による窒素やリン酸の流出が水質汚染を引き起こし、水面下の生物を窒息させ、酸素を奪う有毒な赤潮の一因となっていることも分かっています。」

新技術で農業界に変革をもたらす企業たち

先のような課題が挙げられる中、従来の方法とは違う革新的な新技術で挑む企業がある。例えば、ハーバー・ボッシュ法とは別の形でアンモニアを生成するグリーンアンモニアという技術においてリードするアイスランドのATMONIA 社だ。

Ivan氏によると、グリーンアンモニアは、風力、太陽光、水力などのグリーンエネルギーで製造され、製造過程でCO2を排出しないため、現在のプロセスで年間約5億トンの温室効果ガスの削減が見込まれるという。ATMONIA 社は、再生可能エネルギー、水、空気を利用してアンモニアを生成する、特許取得済みの触媒を利用したグリーンアンモニア技術を開発。最近では、触媒技術の開発にも成功し、中東のいくつかの国で持続可能なアンモニア生産にグリーンアンモニア技術を適用することでSABICと合意したことを発表した。
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