2022年12月末時点の総資産は約2090億ドル(約28兆円)、総預金が1754億ドルのSVBは米国で16番目に大きい銀行に位置づけられていた。同社の破綻は、銀行の破綻としては2008年の金融危機時に破綻したワシントン・ミューチュアル以来の規模となった。
SVBの持ち株会社のSVBフィナンシャルグループは8日に210億ドル相当の有価証券を売却して18億ドルの損失を出し、経営危機を回避するために22億5000万ドルの増資計画を発表した。しかし、取り付け騒ぎに見舞われたSVBを救済する金融機関は現れず、10日にFDICが管理下に置いた。
ピーター・ティールが運営するファウンダーズファンドを含む複数のベンチャーキャピタルは9日、投資先企業にSVBから資金を引き上げるよう助言していた。Yコンビネータのプレジデントのゲイリー・タンも、SVBへのエクスポージャーの抑制を検討するよう呼びかけ「どんな理由であれ、資金がなくなればあなたのスタートアップは死んでしまう」と述べていた。
一方、SVBフィナンシャルのグレッグ・ベッカーCEOはその日の電話会議で、顧客に「落ち着く」よう呼びかけたが、CNBCは10日朝、SVBフィナンシャルの資本調達の試みが失敗に終わり、身売りの交渉が頓挫したと報じた。FDICは、SVBの預金を新たに設立した銀行のDeposit Insurance National Bank of Santa Claraに移管し「保険対象の預金者は13日朝までに資金にアクセスできるようになる」と説明した。
SVBはパンデミック時の低金利を追い風に、VCやスタートアップから預金を集め、2020年初頭に600億ドルだった預かり残高は、2年後に2000億ドルを超えていた。米国の銀行は多額の資金を米国債や他の債券に投じているが、米連邦準備制度(FRB)がインフレ抑制のために急ピッチで金利を引き上げる中で、債券価格は下落し、SVBも含み損を抱えていた。
想定を超える預金の引き出し
一方で、金利の引き上げによってSVBの顧客であるスタートアップは新たな資金調達に苦戦し、SVBの口座から資金の引き上げが相次いだ。想定を超える預金の引き出しに直面したSVBは、やむなく価値が下がった資産を売却し、18億ドルの損失を発生させた。8日には、暗号資産に特化したシルバーゲート銀行が破綻し、それに続くSVBの破綻は、2008年の金融危機とも比較されている。しかし、バンク・オブ・アメリカのアナリストのエブラヒム・プーナワラは、SVBとシルバーゲートは、特に金利上昇に弱い業界である暗号資産やスタートアップ業界を事業基盤としており「特定の銀行に固有の状況から生まれた危機」が市場全体に広がると予測するのは、行き過ぎだと指摘している。
一方、J.P.モルガンやウェルズ・ファーゴ、シティグループなど全米最大級の銀行の株価は、9日に下落した後、10日に上昇した。
(forbes.com 原文)