ベネットの報告書が示すように、アフガニスタン当局は昨年11月中旬、公園やスポーツジム、公衆浴場への女性の入場を禁止し、12月21日には女子の大学教育を即時停止した。その3日後の24日には、女性が非政府組織(NGO)で働くことが禁止された。これにより、人権活動や開発活動に欠かせない、人命を守るための人道支援に深刻な影響がおよぶこととなった。同国では「すべての公共空間から女性を消し去るための措置がとられている」のだ。
報告書では「イスラム主義組織タリバンの組織的な女性差別の累積的な影響は、国際犯罪の実行を懸念させる」と結論づけられている。ベネットは報告の際、女性に対して制限を設けることによる累積効果は「ジェンダーアパルトヘイト(性別隔離)に等しい」と指摘している。
ジェンダーアパルトヘイトは国際犯罪には当たらない。国際刑事裁判所に関するローマ規程によると、アパルトヘイトは人道に対する罪として、人種的抑圧の問題を中心に「ある人種集団による他の人種集団に対する組織的抑圧と支配の制度化された体制の文脈で行われ、その体制を維持する意図で行われる、(本規程に)言及されているものと同様の性格の非人道的行為」と定義されている。
ジェンダーはこの定義の中では触れられていないが、ローマ規程ではジェンダー迫害の犯罪を人道に対する罪として扱っている。「迫害」とは「集団または集合体のアイデンティティーを理由に、国際法に反して基本的権利を意図的かつ著しく剥奪すること」であり「ジェンダー」とは「社会的文脈における男性と女性という2つの性」を意味する。
現状ではジェンダーアパルトヘイトは国際犯罪とは見なされていないが、アフガニスタンやイランを中心に女性に対する抑圧が拡大の一途をたどり、女性の権利が事実上存在しないことから、この問題は注目されつつある。