米仏の高齢者に対する扱いの違い
フランスでは現在、定年退職年齢を62歳から64歳に引き上げるという案に注目が集まっているが、米国の定年退職者の状況をフランスと比較してみよう。経済的に比較的豊かな国々で占められる経済協力開発機構(OECD)の中でも、米国の労働者は特に長きにわたって働き続けることが前提となっている。一方のフランスは、一生のうちで労働に捧げる期間が最も短い国の1つだ。経済的に豊かな他の国々の労働者と比較しても、米国人は長期間働いているにもかかわらず、退職後に受け取る年金は少ない。年金の受給額を最大限に引き上げるには、70歳まで支給開始を待たなければならないことから、米国では、大卒で22歳から働き始めた人は48年間、高卒で18歳から働き始めた人は52年間も働き続けなければならない。ノルウェー、イタリア、イスラエルで目安とされる労働期間は44~45年、フランスやギリシャでは40年未満となっている。
米国は高齢者の貧困率が最も高い国の1つで、高齢者の約4人に1人(23.1%)が貧困状態にある(メキシコは26%で米国を上回っているものの、南アフリカでさえ、高齢者貧困率は米国より低い)。これとは対照的に、フランスは高齢者の貧困率が最も低く、100人中わずか4人(4.4%)しか貧困に陥っていない。
65歳時点の余命は、高齢期の幸福に大きく影響することがわかっているが、この点においてもフランスに水をあけられている。65歳以上のフランス人女性は米国人女性より11%、フランス人男性は米国人男性より5%長生きすることが、統計上明らかになっている。