米国の高齢労働者に引退の機会を
多くの先進国と同様、米国の高齢者はある年齢を超えると、フルタイムどころかパートタイムでも働くことが実質的に困難になる。米国の労働者の多くは希望する前に労働市場から押し出され、52歳を過ぎると労働条件が不安定になる。ベス・トゥルースデールとリサ・バークマンは、52~62歳までの期間を通して継続的に雇用されている労働者は、半分程度に過ぎないことを明らかにした。早期退職はあくまでも最終手段であり、自ら望まずに退職してしまうと、うつ病や社会的な下降移動のリスクを高めることになりかねない。米海軍兵学校のマイケル・インスラー教授は、退職によって国民の健康が著しく改善するとともに、糖尿病をはじめとする医師が診断する疾患のほぼ4分の1、またその他のあらゆる不調も予防する効果があることを発見した。退職者は自身の健康に気を配る傾向があるため、引退は有益だ。例えば、退職すると禁煙しようと努力をする人が多い。
米国は高齢労働者の待遇を改善し、ひいては退職しても大丈夫だと約束しなければならない。民主的な政府であれば、国民が立ち上がればそれに応えてくれることは、歴史が語っている。
保護してもらうためには抗議を
鉱山労働者や運送業者らは、年金が半分以下に減らされることに対し何年もかけて抗議活動を行った結果、議会は年金を30年間保証するブッチ・ルイス法を可決した。フランス人が街頭に繰り出す一方、米国人は老後に資金が尽きることを心配し、見ず知らずの親切な人たちがクラウドファンディングのGOFundMe(ゴーファンドミー)で募金をしてくれたおかげで退職できたと語る。
フランス政府が年金を削減しようとした途端、同国の労働者が示したような団結や怒りを米国の有権者や労働者が示さない限り、政治家は社会保障の支給開始年齢を70歳以上にまで引き上げようとし続けるだろう。
米国の労働者が団結し、年金制度の改善を求めなければ、多くの国民が貯えのないまま定年を迎えるのが当たり前になってしまう。
国民が何もしなければ、米国は高齢者の貧困率が極めて高く、退職後の期間が短い世界の大国という、ぶざまで恥ずかしい立場にとどまり続けるだろう。
(forbes.com 原文)