首都キンシャサで大勢の群衆を前に演説した教皇は、外国企業に対しビジネス手法を変えるよう呼びかけ「アフリカの首を絞めるのをやめてほしい。ここは鉱物資源を奪い、略奪を行ってよい土地ではない」と訴えた。
世界のコバルトの約5分の4は、コンゴ民主共和国の地下に眠っている。コバルトは電気自動車(EV)や電子機器の電池に使われる重要素材だが、その採掘過程では危険な労働環境や児童労働への依存など、深刻な人権侵害があると指摘されている。
米労働省は、少なくとも2万5000人の子どもがコンゴ民主共和国のコバルト採掘場で働いていると推計している。EVの生産が拡大するにつれ、その数は増えるだろう。
コンゴ民主共和国産のコバルトの約15~30%は、人力小規模採掘(ASM)と呼ばれる非正規の採掘方法により集められたものだ。工業化された大規模な採掘場とは異なり、ASMの労働者は原始的な方法でコバルトを集めている。ASMコバルトと、機械化された採掘場のコバルトを見分けることはほぼ不可能だ。
毎日、数十万人の貧しいASM労働者が、ショベルや素手を使って簡素なトンネルを掘り、その中に入ってコバルト鉱石を含む岩を集めている。子どもを含め、家族ぐるみで働く人も多い。集めたコバルトは麻袋に入れられ、地元の中国業者に売り渡される。圧倒的大多数は中国に出荷され、精製後に世界中の電池メーカーに販売される。
EV大手Tesla(テスラ)などの企業にコバルトを供給するスイスの貿易・鉱業会社Glencore(グレンコア)など業界大手は、ASM関連のリスクの存在を認め、児童労働や採掘所の安全性などの問題に業界規模で取り組む姿勢を見せている一方で、ASMコバルトは自社の供給網から排除しており、これは自分たちに直接関わる問題ではないと主張している。
欧米の主要なコバルト購入企業の大半は、このあり得ない主張に必死にしがみつき、非正規採鉱の問題から距離を置こうとしている。グレンコアを含む企業や、こうした企業が取引を行う大手自動車メーカーは。コバルトを享受する者として、非公式な採掘所での課題に対処する責任が直接、自分たちにあることを認めるべきだ。