企業が取れる3つの対策
筆者の同僚ドロテー・バウマンパウリーが作成し、先日発表された白書では、こうした問題への対策が論じられている。白書は、筆者が所長を務めるニューヨーク大学スターン経営大学院の経営・人権センターと、バウマンポーリーが率いる姉妹組織ジュネーブ大学ジュネーブ経営人権センターが共同発表した。バウマンパウリーは、昨年12月に行ったコンゴ民主共和国視察に基づき、世界的な採掘会社や関係各国の政府がコバルト市場の問題に対処すべき方法について、いくつか実現可能なアドバイスを提示している。
1つ目に、コバルトを購入する企業は、ASMが同国のコバルト採掘の中核を担っていることを認めるべきだ。課題に対処する自社の責任を認め、実施可能な安全性・労働基準の策定に貢献する必要がある。自社がASMとはまったく無関係だとの主張は、どんな企業であっても信頼性に欠けるものだ。
2つ目に、児童労働の実質的削減や、採掘の安全性向上のための唯一の方法は、ASMが行われている場所に正規の採掘場を建設することだ。正規の採掘場には、周囲への柵の設置や、警備員の雇用、厳格な安全基準を策定し、採掘労働者協同組合により順守を徹底させることなどが挙げられる。
採掘場への出入りを制限すれば、子どもは立ち入れなくなる。このモデルは、2018年から採掘場1カ所で試験導入され成功を収めていたが、2020年の新型コロナウイルス流行を受け停止されていた。
試験では、男性作業員に対し、女性といっしょに働くことに関する迷信を信じないように説得することの重要性も示された。これにより採掘に従事する女性が増え、世帯収入の増加につながり、採掘場で働く代わりに学校に行く子どもが増えた。
3つ目は、改革に現地の人々を関与させることだ。これには、労働者に未来を変える力を与える採掘労働者協同組合や、規制導入において重要な役割を果たす政府の両方が含まれている。
現地の政府が目標を達成できない部分については、コバルトを大量に購入する企業を有するドイツや米国、日本、韓国などの政府が、厳格な人権基準の策定と実施を支援する必要がある。
(forbes.com 原文)