宇宙

2023.03.11 14:00

一度は実在するとされたスタートレックの惑星バルカン、再びフィクションに

テリー・バーツ宇宙飛行士は、地球を周回する国際宇宙ステーションで『スタートレック』のキャラクター、スポックによるバルカン人の挨拶を披露した。スポックを演じた俳優のレナード・ニモイは2015年2月27日に83歳で亡くなった(NASA)

ミスター・スポックの故郷の惑星は、著者ジーン・ロッデンベリーによる空想の産物だった。

多くの人に愛されている『スタートレック』のミスター・スポックは、地球から16光年離れた実在する恒星40 Eridani A(エリダヌス座オミクロン2星A)を周回するとされる架空の惑星バルカンの出身だが、2018年、天文学者たちはこの40 Eridani Aを周回する本物の惑星を発見した。

バルカン人たちは本当に、この惑星で「長寿」で「繁栄」したのだろうか?

現実世界のバルカンは、巨大なガス惑星であるため、おそらくそうではない。さらにその惑星40 Eridani b(別名40 Eri b)は、そもそも存在しておらず、単なる誤検出だったらしいことがわかった。

これは、近くAstronomical Journalに掲載予定の、国際チームによる最新論文に書かれている発見の1つだ。

数年前、天文学者たちが視線速度法と呼ばれる手法を用いて惑星を1つ発見した。その方法は事実上、惑星が中心星を微妙に「引っ張った」痕跡を探すものだった。

調べたところ、惑星が引っ張ったと思われたものは、恒星の表面で起きていた活動に過ぎなかったようだ。

そういうわけでバルカンは、文字どおり幻の惑星だった。

これは、天文学者や宇宙物理学者の数多いトレッキー(熱心なスタートレックのファン)たちにとってちょっと残念な出来事となった。

「私は講演会まで開いてこれに基づく話を何度かしたことがあります」とベテラン天文学者のフィル・プレートは自身のニュースレターに書いている。「『バルカンを探す』と題して、スタートレック・クルーズの船上で話しました」

科学者たちは、空想の人々が行った場所をわざわざ訪れ、私たちの幻想を台無しにした。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事