歌舞伎俳優・尾上菊之助さんも、本作のファンのひとりだ。コロナ禍のステイホーム期間中に再度FFXをプレイしたことをきっかけに、『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』を企画した。
観客席が360度回転する劇場「IHIステージアラウンド東京」にて、3月4日から開幕した同作は、前編(3時間35分)後編(3時間25分)を合わせて上演時間7時間(途中休憩あり)という超大作だ。
企画、演出、主人公のティーダ役を務める菊之助さんは、本作を国内だけでなく海外のFFファンにも届けたいという。その熱い思いを聞いた。
なぜ今「FFX」で歌舞伎なのか
──菊之助さんはこれまでに「極付印度伝 マハーバーラタ戦記」(2017年)、「風の谷のナウシカ」(2019年)などの新作歌舞伎を手掛けてきました。今回、FFXというゲーム作品を扱おうと考えたのはなぜでしょうか。2020年にコロナ禍に突入したことが、大きなきっかけです。歌舞伎は4月から夏頃まで休演になってしまい、その間私もずっとステイホームをしていました。
家にいる間、家族と一緒に「もう一度ゲームでもしてみようかな」なんて話をしました。元々ゲームが好きだったんですけど、30代40代は忙しいこともありしばらく離れていたのもあって。その時「そういえばゲームで一番記憶に残っているのって、FFXだな」とふと思い出しました。
FFXはPlayStation 2専用ソフトで、シリーズでは初めてキャラクターボイスが採用された作品でした。本当に映画を見ているような感覚で、感動したんです。懐かしくなって、もう一回プレイし始めしました。
そうしたら、この作品で描かれている世界観が、今の時代にぴったりとはまったように感じたんです。コロナ禍で先行きが見えなくて不安になったり、気分が落ち込んだりしている人々が、前向きになれるようなメッセージが込められているなと。
コロナ禍で「自分だからこそできることは何か」を考えるなかで、今まで様々な新作歌舞伎をつくってきた経験とFFXとが繋がり、新作歌舞伎をつくろうと考えました。
すぐに権利元のスクウェア・エニックスにビデオレターと企画書を送り、新作歌舞伎の実現へと至りました。
尾上菊之助が演じるティーダ