この作品は場面転換が多いので、この会場にマッチした作品だなと思っています。通常の劇場であれば、場面転換のタイミングで一度幕を閉めますが、それをする必要がない。また、歌舞伎でも廻り舞台を使うことがありますが、これも転換時に少し時間がかかる。
そういったことを考えると、この会場では転換の時間を感じさせることなく、どんどん物語が進んでいくので、没入感があります。長丁場ではありますが、意外とあっという間に終わるんじゃないかなと。
出演者は、尾上菊之助、中村獅童、尾上松也をはじめ、中村梅枝、中村萬太郎、中村米吉、中村橋之助尾上丑之助、上村吉太朗、中村芝のぶ、坂東彦三郎、中村錦之助、坂東彌十郎 、中村歌六、尾上菊五郎(声の出演)という豪華な顔ぶれ。
海外のFFファンに期待
──今回、海外のファンに向けた発信も強化しているそうですが、どのような期待がありますか。コロナ前までは歌舞伎座にも海外からのお客さまがたくさん来てくださっていましたが、コロナで減ってしまって。ファイナルファンタジーシリーズは、海外にもファンが多い作品ですので、この新作歌舞伎をきっかけに、古典歌舞伎にも来ていただけると嬉しいですね。
FFXファンの方はもちろん、歌舞伎や日本の伝統芸能に興味を持ってくださっている方にも、広く楽しんでいただけると思います。
将来的には、この新作歌舞伎を海外でやってみたいですね。
木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーⅩ』は3月4日(土)~4月12日(水)、IHIステージアラウンド東京で上演中。
──最後に、「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」は、ご自身にとってどのような作品になりそうですか。
我々歌舞伎役者は、古典の伝承を繰り返しながらも、常に自分の中から新しい表現を生み出す“創造”のもとで古典歌舞伎に取り組んでいます。
新作歌舞伎は特段に奇をてらった新しい挑戦ではなくて、その創造のひとつなんです。繰り返している歴史の中の1ページとして刻めれば嬉しいです。
ただ、新作歌舞伎の特性として、歌舞伎ファンだけでなく幅広いお客さまに来ていただけて、文化交流ができるという点があります。
今回も、歌舞伎とゲームとの融合によって、お互いの文化交流と双発展ができればと思っています。歌舞伎好きな方がゲームの世界に触れて、こんなに素晴らしい脚本があるんだと知っていただけたり、ゲームのファンの方が歌舞伎に興味をもってくださったりといった出会いを期待しています。