経済

2023.03.10 08:00

「イールドカーブ」で景気後退を予測できる理由

安井克至
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逆イールドは、企業の長期的収益性や、政府が一定期間後に負債を返済する能力に対して、投資家が確信を持てないことを表し、投資家は将来への不安から、短期債券により多くの利益を求めたり、長期債券の低金利を受け入れたりすることがある。

投資家はしばしば、経済の向かっている方向を追ったり、どこに自分の資金を投資すべきかを予測するためにイールドカーブを使う。たとえばカーブがフラットなら、投資家は生活必需品などの安定した分野に資金を投入し、高級品の企業は避ける。

逆イールドは、不況を予測する手段としては機能しないものの、不況と関連のある指標であることは間違いない。しかし投資家は自分たちが不況に陥っていると結論づける前に、インフレ、雇用状況、賃金上昇などの要因を含めた経済全体を見るべきだ。

 米国連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル理事長が、インフレに対処するために以前予定していたよりも金利を高く引き上げる意志を表明したことで、高金利が経済を鈍化させ、不況の引き金になる恐怖を引き起こした結果、イールドカーブの反転はさらに強くなった。現在米国は昨年10月に国債の3カ月金利が10年国債を上回って以来、逆イールドを経験している。それ以前の最後の逆イールドは、2019年5月に3年国債の金利が10年国債を上回ったときで、同年の10月まで続いた。そして2020年に米国は、新型コロナパンデミックのために不況に陥ったが、わずか2カ月しか続かなかった(史上最短)。

「長い期間資金を固定すれば、ほぼ間違いなく金利は高くなります」と、デューク大学財政学教授のキャンベル・ハーベイは語る。「しかし、現在、ものごとは逆方向になり、10年金利が短期金利をはるかに下回っています。これは『逆イールド』と呼ばれています。過去50年間、米国では7回の逆イールドが起きました。いずれもその後不況になりました」

1986年、ハーベイは1960年代から1980年代までの4回の大規模な経済停滞を綿密に調査した結果、逆イールドと不況を結びつけた論文を発表した。1955年以降に起きた9回の不況すべてが(1つの例外を除き)、逆イールドカーブの後に起きていたことをサンフランシスコ連邦準備銀行の調査が示している。逆イールドから不況までの時間は6カ月から2年にわたる。イールドカーブの反転が始まるとすぐに、経済学者や投資家は注目し始める。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫

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