うぃるこは、2020年6月から2020年12月までの間に、新潟県長岡市大積地区にてイノシシの選択的捕獲を実施し、翌年にその効果を検証しました。捕獲対象は、被害を出す可能性のある個体と、子どもを生むメスの成獣です。検証のために、捕獲を行う農地を中心とした介入エリアと、捕獲を行わない山地を中心とした非介入エリアとに分けて実施しています。捕獲に使用したのは、くくり罠です。うぃるこが捕獲したのは8頭でしたが、同時期にこの実証とは関係なく猟友会や一般の狩猟者による捕獲も行われていました。介入エリアの成獣の推定頭数は35頭。そのうちの8頭をうぃるこが捕獲しました(猟友会は6頭)。
その結果、獣道(イノシシがつける通り道)は42.8パーセント減ったものの、農地周辺の掘り返し跡は14.2パーセント増加していました。推定頭数は、介入前の介入エリアには成獣と幼獣を合わせて約35頭でしたが、介入後の同エリアでは約127頭と激増してしまいました。これは、介入エリア(農地)の頭数を減らしたことで、非介入エリア(山地)から農地にイノシシが移ってきたためと、2021年に本格的に実施された夏の有害捕獲により幼獣の活動が制限され、モニターカメラに映る幼獣の数が増えたからだとうぃるこは説明しています。 しかし、掘り返し跡の数はイノシシの頭数と比例すると言われているため、増えていることは事実でしょう。住民のアンケートでも、実施前と後との被害の印象に大きな差は表れませんでした。うぃるこでは、「1年だけの捕獲では農地エリアの成獣密度は限定的であり、継続的な捕獲により低密度で個体管理することが必要」と結論づけています。
農水省の報告では、日本全体でのイノシシの数は、2000年は15万頭に過ぎなかったものが、2021年にはおよそ53万頭と倍以上に増えています。今回の実証では、被害が増える真夏に捕獲を行うべきところ、酷暑のために思うように活動できず、予定捕獲頭数を大幅に下回ってしまったことや、地元の猟友会や猟師との足並みが揃わなかったことなど、さまざまな問題も浮き彫りにされました。こうした調査を重ねて、本当に効率的な頭数管理の方法を考えなければならないことを、この実証事業が示しています。
詳しい報告書はこちらで見ることができます。
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