ここにデートなるものが入る、だと?
この時点で十分にハードルが高い。さらに、新しい人と関係を作るというのは時間だけじゃなく、心のリソースも持っていかれるのだ。嬉しかったり、不安だったり、悲しかったり、忙しい。
特に離婚を経たシングルマザーは、「まさか自分がまた恋愛市場に舞い戻ることがあるなんて」と思っている方も多いと思う。結婚するときに離婚を予想している人は基本的にはいないわけで、自動的に自由恋愛は終わり、となったはずなのに、再びの自由恋愛市場。
久方ぶりの恋なるものに「えっと、どうするんだっけ」という戸惑いでいっぱい。さらに、恋愛を楽しんでいた時代からブランクがあるだけでなく、年齢を重ね、出産と育児を経て母になり、心身ともに大きく変化したあとなのだ。
かつては胸キュンだった頭ぽんぽんは頭頂部の白髪の具合いが気になるし、ロマンチックなシチュエーションによるドキドキと更年期のほてりの区別がつかなかったり、昔とは何もかも違う。そして家には、命にも代えがたい宝物、子供との生活がある。
何と忙しいことだろうか。
子供との生活を含む、自分の人生の幸せとは。
それを体験できる具体的な形とは。
ダブルスタンダードだか、トリプルスタンダードだか分からないが、その時々で自分にとって最適なバランスを見つけられるといいし、シングルマザーであることを理由にそのバランスを手に入れることを諦めなくていい社会であって欲しい。その中で精一杯、バランスを探してアンバランスを楽しんでいこうではないか。
冒頭で触れたマッチングアプリが再び世に出るときには、シングルマザー当事者それぞれの願いや事情が尊重されることを期待したい。
「シングルマザーだから子供の父親が欲しいんでしょ」「シングルマザーだから養ってくれて頼れる相手が欲しいんでしょ」と思われがちだが、そうかどうかは、人によるのだ。一緒に子育てできるパートナーを求める人もいていいし、子育ては自分でやるから老後のためにパートナーが欲しいという人がいてもいい。
マッチングアプリの中で、それぞれの人の願いがカテゴリーやスペックに埋もれてしまわないサービスであって欲しいと思う。
いろんな幸せや価値観がある中で自分なりのバランスを見つけていくのは、シングルマザーだけの話ではなく、何らかの観点で人は皆そうなのだろう。それなりに幸せになれる共通バランスはもう今の時代にはなさそうだ、年齢を重ねればバランスも変化する、自分なりのバランスを探究することが生きることなのかもしれない。シングルマザーの恋も、その人なりの新しいバランスを探すチャレンジなのだろう。
自分なりのバランスを諦めないすべての人へ、幸あれ。