この一件を、「シングルマザーの恋が公のトピックになるなんて珍しい」と見るのは、起業家であり、シングルマザーである南部彩子氏だ。
「シングルマザーの恋」は社会からどう見られ、当事者はどう感じているのか。寄稿いただいた。
有名な方の監修だったシングルマザー限定のマッチングアプリは、子供への虐待防止の観点から、または広告に用いられた表現についてなどなどに指摘が殺到、それらへの対応も注目された。
「注目された」と感じているのは、私がシングルマザーの当事者だからかもしれない。
「シングルマザーのためのマッチングアプリ? それは興味ある」と思ったし、シングルマザーの恋が公のトピックになるなんて稀有なことだから。
「シングルマザーの恋はとにかく隠せ」のアドバイス
私が離婚したとき、「離婚直後ってモテるよ、自分もそうだったし、周りの人を見ててもそう」と複数人から言われた。「モテる」なんていうのは、とても個人的な体験で感覚的なものだからこれが事実かどうかを問うことに意味はない。
印象的だったのは、この言葉に続き、「恋したらね、周りには黙ってた方がいいよ」と言われたことだ。これもまた複数人から。
厚生労働省の2022年人口動態調査では、2020年の婚姻総数に占める再婚者を含む結婚(いずれかが初婚も含まれる)の割合は26.7%で、全体の約4分の1を占めるという結果だった。さらに、1970年から2020年までの半世紀で、総婚姻数は約103万件から約53万件へと51%水準にまで半減、婚姻総数の激減に影響したのは、初婚同士の婚姻数減少だということが分かっており、男性か女性どちらかが再婚の婚姻は、全体の減少傾向にむしろ抵抗しているとも言える。
4組に1組の男女どちらかが再婚であれば、自分の身近に再婚夫婦がいる確率も高く、それでもなお、シングルマザーの恋を隠さなければならないのはなぜだろうか。
離婚を経て新たな幸せを得ることは祝福されるというイメージもあり、私にはとても意外だった。
しかし、先人である友人達の経験からすると、「シングルマザーの再婚は祝福されることが多い、しかしシングルマザーの恋は否定的な眼差しや言葉を向けられることが多い」のだそうだ。