祝杯をあげるとき、自分自身の時間を楽しむとき、孤独をかみしめるとき......一杯の酒と向き合う空間に身をおくひとときは、明日への活力となる。
12月はクリスマスや忘年会があり、1年で最もワインが消費される時期である。では日本酒は? 確としたデータがあるわけではないが、1月ではなかろうか。
今年はコロナ禍が終わらぬこともあり自宅で正月を過ごした人も多いと思うが、おせちのある食卓に似合うのはやはり日本酒だ。本式の屠蘇はちょっと甘いが、昨今のバリエーション豊かな日本酒は和食のみならず、さまざまな料理を引き立ててくれるだろう。
乾杯の一杯にはスパークリングをよく冷やして、食中には辛口を“冷や(常温)”で、食後には熟成された古酒をお燗して......など、料理とシチュエーションに応じて、そのスタイルと飲み方を多様に楽しめることが日本酒最大の魅力でもあろう。
その多彩な日本酒の世界で、またひとつ愛好家の耳目を集めそうな酒が昨冬リリースされた。
代表銘柄「満寿泉」で知られる富山県の老舗酒蔵「桝田酒造店」と、1801年にその歴史をスタートさせたスコッチウイスキーを象徴するブランド「シーバスリーガル」がタッグを組んで生まれた日本酒「リンク8(エイト)」である。
この両者、「桝田酒造店」は吟醸酒の、「シーバスリーガル」はスコッチウイスキーのともにパイオニアと称されるだけあって、「リンク8」誕生までいくつもの革新的なチャレンジがなされた。
すなわち、数種類の異なる酒米、さらに数種類の酵母で発酵した原酒を、数種類のスコッチウイスキーだるで10カ月間熟成させてブレンド。これは従来の日本酒づくりとは異なり、「シーバスリーガル」のDNAとして受け継がれる“アート・オブ・ブレンディング”を日本酒づくりに取り入れ、複雑で洗練された日本酒をつくるという、独創的な試みであった。
この酒を評して「複雑で骨格のある味わいはローストビーフなど肉料理にも合いますね」と語るのは和食の達人として知られる野﨑洋光だ。
「数十年前の淡麗辛口ブーム、そして昨今の純米大吟醸への傾倒など、日本酒のトレンドも世相を反映しています。和食を評価していただくためにはおいしい日本酒が不可欠ですから、日本酒の進化は大歓迎。食と酒が手を携えてこそ、世界に日本の食文化の魅力を伝えていけると考えています」
「リンク8」の8の字は日本とスコットランドのつながりを表現しているそうだが、無限大のループのようにも見えてきた。日本酒の可能性は∞に違いない。
リンクエイト
容量|750ml
アルコール度数|16度
価格|オープン価格(税込・参考小売価格13200円)
問い合わせ|ペルノ・リカール・ジャパン 03-5802-2756
今宵の一杯はここで
分とく山野﨑洋光が率いる会席料理の正統
テレビでもおなじみの有名料理人、野﨑洋光が総料理長を務める和食の名店。1989年創業以来、西麻布エリア内で2度ほど移転し、2018年には3階建てのビルとしてリニューアルした。スペシャリテである「鮑の磯蒸し」を始め、四季折々旬の食材を、野﨑氏がモットーとする「おもてなしの心」をもって一品へと仕上げる。33年間不変のコース価格(16500円)も驚異的だ。