そんな中、西洋の企業を中心に「仏教」を頼りにするケースが増えている。グーグルが「サーチ・インサイド・ユアセルフ」という仏教をベースとしたマインドフルネスプログラムを開発したのは周知のとおり。他にもセールスフォースが本社ビルに瞑想ルームを設けたり、日本企業でも“食べる瞑想”のワークショップを取り入れるなどプログラムの導入が盛んだ。
世界的に“宗教離れ”が加速する中で、なぜ仏教に注目が集まっているのか。
それはブッダが説いた教えが、スピリチャルではなく、論理的で分かりやすく、日常に取り入れやすいからだと考えられる。日本で仏教の教えといえば、お経や小難しい経典を思い浮かべがちだが、それらは時代と共に思想が積み重なって難化しただけで、実はブッダが説いた教えは、非常にシンプルで庶民的なものだ。
ブッダが直接民衆に語りかけたという原始仏教を考察し、シンプルに構造化してみると、ベースとしての「縁起」、基本的な考え方として「四聖諦」、その実践方法として「八正道」、結果として体得する「慈悲」という4つが挙げられる。
もちろんこの他にも「般若心経」「十二支縁起」「六波羅蜜」などさまざまな教えがあるが、基本的には前述の4つを体得することで、多くの理が網羅できる。したがって、これらを押さえることが、これからのビジネスや社会を生き抜く心の拠り所となるはずだ。
では、具体的にそれぞれがどのようにビジネスに活かせるのか。考察していこう。
縁起=ベース
「縁起」とは、すべての現象は単独で存在するのではなく、何らかの原因・条件があって初めて存在し、その条件がなくなると消滅するという意。ビジネスであれば、自社と顧客のことだけではなく、地球環境も含めた全てのステークホルダーを思いやり、それぞれとの関係を良好に保つことで、持続可能な成長や循環を生み出せるということにあたる。この考え方をベースに据えていれば、サステナビリティやエシカルに重きを置くことは、当然のことだと気づく。
たとえよくない状況に陥ったとしても、関わる人や物事の因果を丁寧に解きほぐして明らかにし、冷静に対処することもできる。また、“諸行無常”というように、他者や物事の状況は刻々と変化し、絶対的なものは存在しないということを心に留め、日々精進することにも繋がってくる。
ちなみに仏教では「空」という言葉もよく使われるが、意味としてはあらゆるものが独立した存在ではなく、互いに依存し合い、実体のないものであるという考え方であり、「縁起」のベースとなる概念と言える。