上司が言っちゃいけないNGワード、心理安全性への取り組みとは

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「心理安全性」とは、自分の気持ちを隠すことなく、自然体でいられる環境、意見や質問を臆することなく言える組織の雰囲気を指す心理学用語です。そうした空気を醸成することで仕事がやりやすくなり、全体のパフォーマンスが上がると言われていますが、やり方によっては逆効果になることもあるようです。その一因には、上司が言ってはいけない意外な言葉がありました。

クラウド活用と生産性向上の専門サイト「BizHint」を運営するビズヒントは、今年の1月、BizHintの読者で事業部長以上の立場にある企業の決裁者188人を対象に、組織の心理安全性に関する調査を実施しました。それによると、心理安全性の浸透に取り組んでいると答えた人は54パーセント、取り組もうとしていると答えた人が90パーセントあり、意識の高さが伝わります。

しかし、なかなかうまくいかないのが現状のようです。心理安全性の浸透に取り組んでいる、または取り組もうとしていると答えた144人に失敗体験を聞いたところ、「厳しさや張りのないぬるま湯組織になった」という事例がもっとも多くありました。また「甘えの気持ちから責任感やモチベーションが低下した」、「自律の履き違えで勝手に動かれ、組織として機能しなくなった」などの体験が続きます。「遠慮のない空気」が逆に人間関係トラブルやハラスメントを招くこともあったようです。

さらに調査では、このような失敗を招く一因にもなったと思われる上司の発言が明らかになりました。心理安全性の浸透によかれと思って部下にかけていた言葉で、逆効果だったと感じているもののトップは「何か意見はないかな?」でした。2位は「いつでも相談して」です。これらの言葉は、気さくな雰囲気でチーム全体が一丸となれる声かけのように思われますが、逆に上司が「意志決定を放棄している」と不信感を持たれたり、積極的に意見を言う人間に仕事が集中してしまうなど、悪い結果を生んでしまったのです。

ではどうすればいいのか、調査ではそのヒントも示唆しています。組織の心理安全性は高いかとの問に、「十分高い」と「やや高い」と答えた74パーセントの人たちに、何をしているかを尋ねると、「上司や仲間と話をする時間を設けた」、「組織の理念・ビジョンをチーム内で強く共有した」、「部下への一方的な接し方を変えた」といった意見が聞かれました。

意見を募ったり、相談してねと声をかけるだけでは、上司から一方的にメッセージを発するだけで無責任とも言えます。心理安全性の提唱者であるハーバード大学心理学教授のエイミー・エドモンドソン博士は「アイデア、疑問、懸念、失敗を口にしても、罰せられたり自尊心を傷付けられることがないという信念」だと説明しています。そうすることで、人間関係上のリスクを冒してもチームの安全が保たれるというわけです。まずは、チームで心理安全性の理念を共有し、何のための心理安全性かを確認し合うことが重要でしょう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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