ライフスタイル

2023.03.09 09:30

海に溶け込む「透明」な船体 世界初3Dプリントヨットの斬新なコンセプト

2268
──3D印刷でどうやってヨットを建造するのか?

ペガサスのような3Dプリント建造物を作る上での問題はただ1つ、リソースだ。問題は「建造できるか」ではなく「いつまでに建造できるか」だ。

これまで、アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)分野の有力企業から非公式なアドバイスを受けてきた。素材がポリマー合金になるのか金属合金になるのかは未定だ。現在、積層造かたちで使用されるエンジニアリングポリマーはリサイクルできないため、これも考慮すべき要素となる。

素材や、ロボットを使った積層造形技術の他にも、船の形状そのものも革新的なものになる。船体と甲板上の構造を統合させることで、三角形の3Dメッシュの骨組みが荷重を船全体に効果的に分散させ、強度の向上と減量が実現できる。

最終的な船の形状は有限要素解析(FEA)と高度なAIを用いて微調整する。全長88メートルの船全体を通して変化する荷重・衝撃要件に応じて、大小の三角形を使ったフラクタル構造になる可能性が高い。


3Dプリントによる建造の想像図(FORAKIS DESIGN)

──反射ガラスにより「透明」に見えるデザインの経緯と実現方法は?

元々は、海の上に浮かぶ雲のようなヨットのデザインを考えていた。反射ガラスは空に向けられている。発電に使う太陽放射を多く集める意図もあるが、空や雲の反射を捉えて見ている人の方向に向けるためでもある。

また、金属製の船体はやや水面に向けて角度がつけられ、海を映している。燃料に水素を使用すれば、排出されるのはクリーンな蒸気のみになる。

──「ツリー・オブ・ライフ」部分の仕組みや、考案のきっかけは?

水耕栽培はすでに大きく進歩しており、近い将来、世界(さらには宇宙飛行士)の食生活を支える重要な技術となる。このシステムは、建築やデザインの目玉として、また自分たちの起源は自然にあることを常に思い出すためのものとして組み込んだ。


船の中心には映画『アバター』を連想させる「ツリー・オブ・ライフ」がある(FORAKIS DESIGN)

私は映画『アバター』が好きだ。この作品を意識したわけではないが、ジェームズ・キャメロン監督は深海探検分野での貢献などですばらしいイノベーターであることを知らない人は多い。

──ペガサスの理想的な所有者は?

人類全体のサステナブルな未来を大事に考え、こうした方向に進めるよう貢献したいと考えている明確なビジョンを持った人だ。イーロン・マスクはぴったりな所有者になる。私は彼の大ファンだ。あるいはジェームズ・キャメロンも良いかもしれない。

forbes.com 原文

編集=遠藤宗生

ForbesBrandVoice

人気記事