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2023.03.10

「リスキリング」への期待と現実、昇給したのはわずか1割

Getty Images

政府が5年間で1兆円の予算を投じる方針を明らかにし、助成制度を拡充しているリスキリング(学び直し)。そんなリスキリングの実態調査を、転職情報サイト「マイナビ転職」が 20~59歳の正社員800名を対象に実施。結果からは、期待と現実のギャップが見えてきた。

まず、リスキリングは必要だと思うか?の質問については、「そう思う」の回答が、「とてもそう思う」(21.1%)「ややそう思う」(58.5%)を合わせて、約8割を占める結果に。リスキリングに期待することを尋ねると、「仕事・働き方の幅を広げること」(40.1%)が最も多く、「学んだ知識をいまの仕事・業務に役立てること」(35.9%)、「昇給」(29.6%)が続いた。

さらに、リスキリングを実施した結果について聞くと、「資格の取得ができた」が最多(26.8%)となったほか、次いで「時間確保やコストの確保が大変だった」(18.4%)、「身に付けたスキルを生かせていない」(16.8%)という答えが上位に。中でも、リスキリングを会社が評価した証である、「昇給した」は11.2%、「昇進・昇格した」は6.4%で、いずれも1割程度に留まった。

他にも「人脈が増えた」(7.8%)など、リスキリングの成果を実感するポジティブな答えが並ぶ一方で、多くの場合、リスキリングが昇給や昇進にはつながっていないという現実が明らかになった。


リスキリングを現在行っていない理由としては、「時間がない/忙しい」(39.1%)が最も多く、「何から始めればいいか分からない」(20.6%)、「勉強にお金をかける余裕がない」(19.8%)の回答が上位に。金銭的・時間的コストがハードルになっている様子が分かる。

また、リスキリングを行うにあたり勤務先にあったらうれしい制度については、「学習費用を会社が負担してくれる制度」が5割超で最も多く、次いで「賃金に還元される制度」(49.9%)、「就業時間内にリスキリング(学習)を実施していい制度」(39.4%)に回答が集まった(いずれも複数回答可)。

月収がいくら上がればリスキリングをしたいと思うかを聞くと、最多回答、中央値はいずれも「1万円」(23.1%)という結果に。次いで、「5000円」(15.3%)、「5万円」(12.3%)となり、大幅な増額を期待する声は少なかった。
 
「マイナビ転職」編集長の荻田泰夫氏は総評で、リスキリングが今後ますます重要になっていくものの、経験者の多くがメリットを実感できていない現状があると指摘。その上で、企業が昇給昇格などについてどのように評価するのか、積極的に情報開示をしていくことが不可欠だと説明。

「企業は、リスキリング経験者の事例や仕事・領域ごとに『新しいスキルを身に付けることで、どのようにキャリアを広げていけるのか』ということを、社員にガイドすることが有用だと思います。今後は、社員一人一人の挑戦を後押しし、評価する環境を整え、身に付けたスキルを発揮できる機会・環境を提供し、好循環を促すことが企業経営に求められるようになると考えられます」と企業側への対応を求めた。

プレスリリース

文 = 大柏真佑実

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