日本では中高時代に文理選択を迫られ、大学進学で女性の比率はぐっと落ち込む。大学など高等教育入学で工学、製造、建築を専攻する人のうち、女性の割合は16%。STEM分野の男女比の偏りは「水漏れパイプ」現象として知られている。社会心理学者が、幼年期・思春期から成人期、労働期までの各段階で、さまざまな偏見や差別により女性を遠ざける要因を明らかにしたものだ。
社会的な要因も大きい一方で、STEM女性キャリアは圧倒的にロールモデルが少ない。最近は工学系入試で「女子枠」を設けたり、女子大学に初めて工学部を設置したりして、STEM女性を増やすために抜本的な改革も進められるなか、民間でも独自の取り組みが始まっている。
アマゾンジャパンでは、理工系分野に興味がある女性の学生とつながるネットワーキング・プラットフォーム「Amazon WoW」を開設し、1周年を迎える。これまでコーディングなど実務的なアップスキリングや、先輩やビジネスリーダーによるキャリアトークなどのセッションを開いてきた。
このプラットフォーム運営に関わる2人の女性社員も、またSTEM分野と関わりの深いキャリアを送ってきた。文理選択の先にある、多様なSTEM女性のキャリアについて探る。
「STEM分野のキャリアが描けない」を変える
アマゾンジャパンで昨年から始まった「Amazon WoW」は、毎回20〜50人ほどの女性学生たちが集まり、社員のキャリア遍歴を聞いたり、プログラミングのスキルを学んだりしている。昨年は1年間で14回開かれ、延べ458人の学生たちが参加。STEM分野の仕事に関心のある女性に好評だ。企画を始めたのは、アマゾン ジャパン人事部シニアマネージャーの奥田裕子だ。自身は、文系と理系を横断するキャリアで、女性学生にエンジニア職に興味を持ってもらう活動はライフワークだという。
新卒採用をするなかで女性学生たちから「(STEM分野で)ロールモデルの女性がいない」「エンジニアでやっていけるか不安」といった声が多く挙がっていたことから、このプロジェクトを始めた。
「私の大学時代から20年近く経っており、女性の多様なキャリアが広がっているのに(STEM分野では)不安や悩みの声はあまり変わっていないと感じました」
だからこそ、IT分野での長期的なキャリアを考える人たちの将来の選択肢を広げるため、技術面だけでなくキャリアやリーダーシップについて学ぶ機会なども提供している。