健康

2023.03.10

正解のない時代を生きる私たちの必修科目「セルフアウェアネス」

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ここ数年、企業の企業経営や組織開発のシーンにおいても「ウェルビーイング(Wellbeing)」というキーワードが取り上げられることが増えてきた。

飽和する市場環境、テクノロジーをベースにした社会の急速な発展、個人の価値観の多様化、会社組織と個人の関係性の変化、それらは世界的なパンデミックによってさらに加速した。近年私たちの身の回りで起こっている大きな環境変化が、生きることの本質的な意味を問い直させる流れにあるといえるだろう。

空前のサウナブームとともに“ととのう”という言葉がブームになり、それ以前から広がっていたヨガや瞑想などで心身のコンディションをケアする個人が増え、組織としてそうした機会を設ける企業も増えてきている。

一方で、そのような機会は、心身の状態を健やかにコンディショニングして「Well(良い状態)」にすることにはつながるが、”生き方”や”あり方”を本質的に良い状態にしていくというニュアンスをともなう「ウェルビーイング」にまでは踏み込めていないように感じる。

どうすればより本質的な「ウェルビーイング」を実践し、個人や組織を変えていくことができるのか。そこで注目したいのが「セルフアウェアネス」という概念だ。

セルフアウェアネスとは?

「セルフアウェアネス」を端的に日本語で説明すると「自分に意識を向けること」。意識というと、つい思考的なものを連想しがちだが、セルフウェアネスにおいては思考に限らず、心や感情、身体や身体感覚なども包括したホリスティック(全体性)な観点で自己を理解するイメージだ。

日本においてまだ浸透していない言葉だが、実は米国を中心に、『これからの時代を生きるために必要な人類のソフトスキル』の概念のひとつとして広がっている。

世界的ベストセラー『EQ こころの知能指数』の著者である心理学者のダニエル・ゴールマンは、EI(感情的知性)の第一因子として「セルフアウェアネス」を挙げている。また、スタンフォード大学経営大学院の調査でも、リーダーが伸ばすべき最大の能力の筆頭に挙げられている。

組織心理学者であるターシャ・ユーリックは、この「セルフアウェアネス」には2つの側面があると提唱する。ひとつは、自分の自分に対する理解である「内面的自己認識(Internal Self-awareness)」、もうひとつが、他者が自分をどう見ているかに対する理解である「外面的自己認識(External Self-awareness)」である。

この「内面的自己認識」と「外面的自己認識」をバランス良く認識できていることがビジネスリーダーとして好ましいというのがユーリックの理論だ。
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文=小川 麻奈

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