宇宙

2023.03.09 14:00

NASA月ロケットの騒音は「シリアルを食べる音の4000万倍」

NASAの大型ロケット「スペース・ローンチ・システム」は2022年11月16日、フロリダ州ケネディ宇宙センターの39B発射台から打ち上げられた(Bill Ingalls/NASA via Getty Images)

NASAが1960年代と1970年代に月探査ロケットの「サターンV(ファイブ)」を打ち上げた時、騒音があまりにも大きかったためにコンクリートが溶けたと言われたが、実際にはそんなことは起きなかった。このため、NASAが昨年11月、「アルテミス1」の月探査ミッションで新型ロケット「スペース・ローンチ・システム(SLS)」を打ち上げた時、米国の科学者チームは、誤情報が流れる前に先手を打つべく、詳細な騒音測定を行った。

SLSは、推進力がサターンVを13%上回る世界で最も強力なロケットで、米東部標準時の昨年11月22日午前1時47分にフロリダ州ケネディ宇宙センターの39B発射台から打ち上げられた。

測定された音は、予想以上に大きかった。米国音響学会の論文誌JASA Express Lettersに掲載された論文の共著者ホイットニー・コイルによると、発射台から5km離れた地点での騒音レベルは、シリアルの「ライスクリスピー」を食べる音の約4000万倍だった。

ロケット打ち上げでは、衝撃による瞬間的な音圧の増加によってバリバリという音が発生する。ユタ州ブリガムヤング大学とフロリダ州ロリンズ・カレッジの研究チームは、ケネディ宇宙センター周辺のさまざまな位置で、音の大きさを計測した。

発射台から1.5kmの位置で、騒音は136デシベルに達した。5.2km離れても129デシベルだった。デシベルは値が10増えるごとに量が10倍となる。

ロケットの騒音は、打ち上げ前にモデルで予測していたよりも20デシベル近く大きかった。

論文の共著者ケント・ジーは、今回の研究結果が、サターンVの時に起きたような誤情報の拡散を防ぐことを期待していると語っている。

アルテミス1ミッションでSLSが打ち上げた宇宙船「オリオン」は、月周回飛行を終えた後、2022年12月11日に太平洋に着水した。

forbes.com 原文

翻訳=高橋信夫・編集=遠藤宗生

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