Forbes BrandVoice!! とは BrandVoiceは、企業や団体のコンテンツマーケティングを行うForbes JAPANの企画広告です。

2023.03.22

愛知県豊橋市「未来の農をつくる」農業プロジェクトが始動

日本有数の農業地帯である愛知県豊橋市が、2022年8月に打ち出した農業プロジェクト「TOYOHASHI AGRI MEETUP」。同年11月に「アグリテックコンテスト」の開催を発表し、農業系スタートアップに豊橋の農業課題を解決する提案を募った。

全国から33社が名乗りを上げ、2023年1月18日に行われた最終審査「ファイナルデモデイ」で、入賞3社が決定。2023年度より入賞企業と農家をマッチングし、実証実験をスタートさせる。

「未来の農をつくる」をコンセプトに、豊橋市、JA豊橋と農家、そして入賞企業の1社、TOWINGが進める協働プロジェクトを取材した。


農業における課題解決を目指すプロジェクト

愛知県の東南部に位置する豊橋市。年平均気温17.3℃、年間降水量1500.5ミリメートル(共に令和2年度・豊橋市発表)と温暖な気候に恵まれ、野菜、果樹、花き、稲作など約70品目にも及ぶ多様な農業が営まれている。

一方で、土地利用型作物の生産性の向上、施設園芸の高度化、持続可能なエネルギー・農業資材の開発など、さまざまな営農上の課題を抱えている。

そこで豊橋市が打ち出したのが、地元の農家、農業関連企業と全国の農業系スタートアップとのマッチングで課題を解決する「TOYOHASHI AGRI MEETUP」だ。

「農家さんにとっての解決したい課題は、スタートアップ企業にとってはビジネスチャンスでもある。お互いがウィンウィンの関係を築き、豊橋の地から未来の農業をつくり、全国に発信していこうというのがプロジェクトの狙いです」

そう語るのが、豊橋市役所 産業部 地域イノベーション推進室の室井崇広(以下、室井)。本プロジェクトを文字通り、推進してきた人物だ。

彼を中心に、「TOYOHASHI AGRI MEETUP」に関わるキーパーソンたちに話を聞き、豊橋市の新たな農業への挑戦を紐解いていく。

豊橋市役所 産業部 地域イノベーション推進室 室井崇広

豊橋市役所 産業部 地域イノベーション推進室 室井崇広


農家のみならず、国の課題も解決するTOWINGの提案

コンテスト入賞企業の一つ、TOWING(愛知県名古屋市)は、通常3~5年かかる土づくりをわずか約1か月で可能にする世界初のスマート人工土壌・高機能ソイル技術を活かした、次世代の高機能バイオ炭「宙炭(そらたん)*」を開発。

*宙炭とは、TOWING独自のバイオ炭の前処理技術、微生物培養等に係る技術を、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構が開発した技術と融合し、実用化した高機能バイオ炭の名称

「我々は名古屋大学発のスタートアップということもあり、県内の農業を盛り上げたいという使命を感じています。なかでも豊橋市は全国的なキャベツの生産地ですので、弊社の技術を活用していただきたいと切望していました。しかしスタートアップが大きな組織であるJAさんに営業をかけるのは現実的に難しい。豊橋市の全面支援が得られる今回のコンテストは弊社にとって魅力的でした」(TOWING 取締役COOの木村俊介/以下、木村)

「宙炭」を製造する過程で特に画期的だったのは、果樹の剪定枝や畜糞などのバイオマス資源をアップサイクルすることができる点だ。

「特に果樹の剪定枝の処理は以前から地元の農家さんから出ていた大きな課題でした。それを解決する提案が素晴らしかった。高機能バイオ炭はまさに地域特化型のサーキュラーエコノミーで、豊橋市だけでなく、日本ひいては世界全体の経営効率が向上し、環境負荷の低減に寄与する可能性を秘めたものだと思います」(室井)

TOWINGが開発した高性能バイオ炭「宙炭」

TOWINGが開発した高性能バイオ炭「宙炭」


2022年7月、政府は環境と調和のとれた食料システム確立のため、環境負荷低減事業活動の促進等に関する法律「みどりの食料システム法」を施行した。

同法律は農林漁業者に対し、土づくり、化学農薬・化学肥料の使用削減、温室効果ガスの排出量削減などを促している。TOWINGはこの法律に着目した。

「環境負荷低減は重要ですが、農家さんの視点に立つと収益を確保する仕組みが成り立っていないと、取り組むことは難しいと考えました。そこで、農家さんと国のそれぞれの課題を一挙に解決するソリューションとして『宙炭』を提案しました。『宙炭』を用いることで、化学肥料の使用量を削減でき、バイオマス資源をアップサイクルすることで、CO2の削減にもつながります」(木村)

豊橋市の場合、畜糞や脱穀などもバイオマス資源に該当。全国各地の特性に合わせて、本来廃棄される資源を循環して再利用させることができるのが「宙炭」の強みだ。

TOWINGは高機能バイオ炭を育苗培土に100%利用した植物苗「宙苗(そらなえ)」も開発。トマトやイチゴなどの野菜・果樹のほか、マリーゴールドやカモミールといった花壇用の栽培実証に成功している。さらに、利用量に応じて、カーボンクレジットの代理申請・売却益の一部を生産者に還元する仕組みを構築しているのも評価された。

TOWING COO 木村俊介

TOWING COO 木村俊介

「宙炭」の実証実験に期待を寄せるキャベツ農家

「宙炭」の実証実験はキャベツ栽培で行うことが決まった。

「『宙炭』を使うメリットは3つあります。1つ目は、化学肥料を有機肥料に切り替えることができること。最近は化学肥料の価格が上がっているので、コストダウンにもなります。2つ目は、栄養が均等に行き渡ることでキャベツ1個あたりの重量を増やすことができることです。そして最後は、連作障害を抑制し、土地の利用効率を上げること。もちろん今後の実験で実証していく必要がありますが、成果を上げられると自信を持っています」(木村)

今後のスケジュールについては、TOWINGと農家の仲介役を務めるJA豊橋 営農部 営農指導課の髙須雄司(以下、髙須)が、以下のように説明する。

「秋冬期のキャベツの作付けに合わせ、第一段として2023年の7~8月に『宙炭』を試験的に導入します。キャベツ畑の面積は豊橋市全体で約1100ヘクタールあるため、農家さんの希望を伺いながら調整をしていく予定です」

現在、JA豊橋のキャベツ部会には491人の農家が入会している。「宙炭」の話を初めて聞いた時、部会長の神藤竜也(以下、神藤)は「夢のような話だ」と驚いたという。

JA豊橋 キャベツ部会 会長 神藤竜也

JA豊橋 キャベツ部会 会長 神藤竜也


「従事者の高齢化や担い手不足という問題もあり、少しでも生産性を上げて、労働力を減らしたいというのが農家の願いです。特に土壌づくりが厄介。場所によって土目が違うため、肥料を蒔く回数がまちまちで、時に二度手間三度手間になることも。『宙炭』を使うことで、栄養がむらなく行き渡り、作業工程が1回で揃えられればかなり楽になります」(神藤)

期待が膨らむ一方で、課題もある。それは散布方法だ。化学肥料はペレット状が主流なのに対し、土状の「宙炭」はスプレッター(堆肥散布機)が必要となる。しかしどこの農家でも所有しているわけではない。「導入費用がかかると二の足を踏む農家も多い」と神藤は危惧する。さらに髙須も続く。

「我々JAが願っているのは、農家さんの所得向上です。高性能バイオ炭の採用が所得向上につながることを期待していますが、最も重要なのは農家さんが使いやすいかどうか。無理を言うと、ペレット状の肥料を開発していただけるとすごくありがたい」(髙須)

TOWINGにとっては、こうした忖度のない意見は願ったり叶ったりだと木村は言う。

「実証実験を通して、『宙炭』を客観的に評価していただけることは、我々にとっても大きなメリットになります。農家の方々の意見を受け、改善を重ねていきたいと思っています」(木村)

実証実験の目的は、問題点を見つけ、いかにクリアにしていくか。最終目標である2~3年後の社会実装に向け、豊橋市、JA豊橋、TOWING、そして農家が密なコミュニケーションを取り、解決していくことがカギとなる。

JA豊橋 営農部 営農指導課 髙須雄司

JA豊橋 営農部 営農指導課 髙須雄司


豊橋から新たな農業イノベーションが生まれる

TOWINGのほかに「アグリテックコンテスト」で入賞を果たしたのが、テラスマイル(宮崎県)とクオンクロップ(東京都)。

テラスマイルは、農業を取り巻くデータを一元化・分析し、経営判断をサポートする自社システム「RightARM」を活用し、豊橋市の名産品であるトマトの収穫傾向予測支援の仕組みを構築することを提案した。

クオンクロップは、地球環境への負荷、サステナブル消費への関心を背景に、自社アプリ「My エコものさし」を開発。花の分野における温室効果ガスの削減貢献度などを測る取り組みを提案した。

「コンテストの開催前に各農家が抱えている課題を特設サイトで開示していたのですが、テラスマイルさんはトマト農家、クオンクロップさんは花農家の課題を解決するのに申し分のない提案をしてくれました。こちらの2社につきましても、今後実証実験を行う予定です」(室井)

2023年4月からいよいよ始動する、スタートアップと地元農家・企業による実証開発プロジェクト「TOYOHASHI AGRI MEETUP」。最後に豊橋市が思い描く「農業の未来」を訊ねた。

「高い生産性を誇る豊橋市の農家さんと、最先端のテクノロジーを持つスタートアップ企業を結び付けることで、農業の未来に新たなイノベーションを起こしたい。そして豊橋市の農業振興はもちろん、日本全体の農業がさらに発展していくことを願っています」(室井)

「アグリテックコンテスト」は、来年度以降も定期的に開催予定。熱き志を持った者たちが、未来を切り開く。日本の農業の新たな幕が、今まさに豊橋から開けようとしている。

TOYOHASHI AGRI MEETUP
https://toyohashi-agri-meetup.jp/

TOWING
https://towing.co.jp/

クオンクロップ
https://cuoncrop.com/

テラスマイル
https://terracemile.jp/

TOYOHASHI AGRI MEETUP◎「未来の農をつくる」をテーマに、愛知県豊橋市の農業者、農業関連企業と全国の有望な農業系スタートアップをマッチングし、本市を実証フィールドとした農業課題の解決につながる新製品・サービス開発を目指すプロジェクト。採択企業は2023年度より豊橋市を実証フィールドとした新製品開発・サービス開発に取り組み、社会実装と地域の農業課題の解決を目指す。

Promoted by TOYOHASHI AGRI MEETUP / text by Tetsujiro Kawai / photographs by Daichi Saito / edit by Aya Ohtou(CRAING)

ForbesBrandVoice