醤油が海をキレイにしちゃう、製造工程の廃棄物から思わぬ副産物

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明治22年創業の老舗醤油メーカー、ヤマモリは、お醤油の製造工程で排出される「しょうゆ油」から、海洋生分解性プラスチックが作れることを発見しました。これが実用化されたなら、廃物から生分解性プラスチックという、じつにエコでおいしい炭素循環サイクルが完成します。
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しょうゆ油は、発酵熟成させた「もろみ」を圧搾した際に排出される油のことです。日本醤油協会が2007年に発表した「環境自主行動計画についての調査票」によれば、日本の醤油製造業者が1年間に廃棄するしょうゆ油の量は約4600トンにのぼります。ヤマモリでは、以前からしょうゆ油を廃棄することなく、工業用せっけんや燃料に再利用してきました。

2020年からは、生分解性プラスチックの生合成の検討を始め、2021年には、岩田大学と東京農業大学と共同で、しょうゆ油を、生分解性プラスチックに生合成する研究に着手しました。そして、水素細菌の一種を使うことで、しょうゆ油からバイオプラスチックPHAの一種であるP(3HB)が合成できることを発見したのです。

生分解性プラスチックとは、微生物などによってプラスチック以外の物質に分解される、環境にやさしいプラスチックのことを言います。とくにPHAと呼ばれるものは、微生物がエネルギー備蓄のために体内で合成(生合成)します。飢餓状態になったとき、これを分解して消費するのです。P(3HB)は、ポリプロピレンに性質が似たバイオプラスチックです。海の微生物によって分解されるため、海のプラスチック汚染対策につながるとして注目を集めています。

しょうゆ油は、大豆油を使った場合よりもP(3HB)の合成量が多く、また他社のしょうゆ油でも合成ができるということで、生分解性プラスチックの普及に期待が高まります。ただし、生分解性プラスチックには課題もあります。そのひとつに、自然に分解されるからとポイポイ捨ててしまう人が増えるという懸念です。じつは、生分解性プラスチックは、温度や湿度、微生物の分布など、さまざまな条件が揃わなければ、なかなか分解されません。正しく分別回収して処理することが肝心です。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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