これは、同社の売り口上──純金属から製造されたジュエリーを購入することは、ファッションで自分らしさを表現するのと同じだけ、その貴金属の価値に投資することでもある──を、看板に掲げるブランディング戦略だ。7879共同創業者のサッチ・クカディアは「顧客は変化した。何か違うものを求めている」と語る。
一見すると、アイデアは単純だ。かねて投資家は、特にインフレ高進時には、目に見える価値保蔵手段として貴金属を購入するよう推奨されてきた。だが、通常それは地金専門業者からコインや延べ棒を購入し、どこかの金庫に放置しておくことを意味していた。そこで、クカディアと共同創業者のベン・フラワーズは、同額の投資をした上で、それをジュエリーのかたちで所有し、身に着けることを楽しめたらどうだろうと考えた。
この考え方は、インドなど一家の財産のかなりの部分を宝飾品で保有することが多い国では定着している。しかし、欧米でジュエリーを購入する場合、その真の価値はほとんどわからない。購入価格の大部分はメーカーや小売業者のブランド価値に縛られ、貴金属の他に宝石がついていることもあり、換金するには買い手の需要に左右される中古市場で売るしかない。
7879のジュエリーは純度が高いため、重さと金やプラチナの時価さえわかれば価値を把握できる。そして重要なのは、7879では顧客が選んだタイミングで、市場価格を反映した価格での買い取りを保証している点だ。「ジュエリーは、身に着けようが着けまいがあなたのために汗を流してくれる資産だという発想だ」とフラワーズは説明する。買い取ったジュエリーは、溶かされて新しい商品に生まれ変わり、次の顧客に販売される。
「ジュエリーは感情的な買い物として購入される」と、アウトレット通販サイトSecretSales.com(シークレットセールス)の創業者でもありファッション業界に詳しいクカディアは指摘する。「けれど、その価値はたいてい商品そのものよりもブランドにある。だから、より明確な価値の提供を目指した」
クカディアは、著名なインフルエンサーが最近公開した動画で、1000ポンド(約16万円)で購入したデザイナーズリングの金属の市場価値が100ポンド(約1万6000円)しかないと知ってショックを受けたと明かしていることに言及。同じ値段で販売している7879の金の指輪なら、その6倍か7倍の価値のある金属でできていると述べた。