覚えている読者も多いと思うが、『ワイルド・スピード』の最初の7作でロス市警の警察官ブライアン・オコナー役を演じたポール・ウォーカーは、13年にカリフォルニア州で自身が助手席に乗っていたポルシェ・カレラGTが事故を起こして悲劇的な死を遂げた。亡くなった当時、ウォーカーは7作目の『ワイルドスピードSKY MISSION』の撮影を終えていなかったため、脚本の書き直しや、撮影中に弟のコーディの代役を立て、制作を終了せざるを得なかった。
ウォーカーは「ワイルド・スピードX2」で1998年にデビューした日産スカイラインGT-R R34を運転したことでチューナー界では有名。このいわゆるJDM(日本国内市場仕様)モデルのGT-Rはアメリカには輸入されなかったが、「ワイルド・スピード」のおかげで、スカイラインは多くのファンを魅了した。
そして今、アメリカの「25年輸入ルール」(車齢25年以上の自動車は、適用されるすべての連邦自動車安全基準に適合していなくても、合法的に米国に輸入できる法律)によって、ウォーカーの演技で有名なスカイライン GT-R R34型は、米国で合法的に走行可能な自動車として登録できるようになった。
25年前のクルマに、なぜこれほどまでにこだわるのか? R34の何がそんなに特別なのか?
簡単に言えば、このクルマは技術的な力作なのだ。280psを叩き出した2.6リッター直列6気筒ツインターボエンジンは(当時としては)出力は控えめだったけど、優秀なATESSA四輪駆動システム、スーパーHICAS四輪ステアと組み合わせて、ゼロから100km/hまでの加速は4.6秒と、1998年当時は速い方だった。そして大ヒット「ワイルド・スピード」のウォーカーが乗ったからだ。
20世紀末にツインターボの直6エンジンがたった280psしか発揮しないのはみっともないと思う人もいるだろう。というのは当時、日本の自動車メーカー間のいわゆる「280馬力自主規制」(日本の登録車には、かつて「280馬力自主規制」が存在し、高性能車の最高出力が軒並み280馬力に設定される時代があった)を知らない外国人には奇妙に映ったのだ。しかし、実際は、その真相は違っていた。