経済

2023.03.05

対ロシア制裁がほとんど成果を生んでいない理由

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ロシアがウクライナに侵攻してから1年が経ったが、西側諸国が鳴り物入りで導入した一連の経済制裁は、ロシアにウクライナ撤退を迫る上でほとんど効果を上げていないようだ。むしろ、逆効果を生んでさえいる。

これは極めて無念なことだ。ウクライナ侵攻ではこれまでに30万人もの命が失われているとも推定される中、制裁が何の助けにもなっていないのだ。

筆者は最近、米国公共ラジオ放送(NPR)デトロイト局の番組に出演し、侵攻開始直後に米誌タイムに寄稿した記事「Why Sanctions on Russia Won’t Work(対ロシア制裁が効果を生まない理由)」で訴えた主張に基づいて、制裁に関する疑問に答えた。

残念ながら、タイム誌の記事で行った予想は現実のものとなってしまった。制裁が奏功して紛争が終結していたら、どれほどよかったことだろう。

しかし実際にはそうはいかず、国家に制裁を科したときにほぼ必ず起きる状況が生まれている。

以下に、NPRデトロイト局で筆者が語った主なポイントをまとめよう。

番組では、制裁擁護派が、対ロシア制裁が成果をあげている理由として、ロシア経済が崩壊しつつあると指摘した。同国経済が縮小しているのは事実だ。経済情報サイト「トレーディング・エコノミクス」によれば、ロシアの国内総生産(GDP)年間成長率は、2022年第1四半期にはプラス3.5%だったが、直近四半期はマイナス3.7%となっている。

しかし筆者の理解では、制裁の目的はロシア経済に打撃を与えることではない。プーチン政権の考えを変えて、ロシア軍をウクライナから撤退させることが目的だったはずだ。その意味で言えば、制裁は失敗だ。

プーチンはまったく手を引いていない。それどころか、自国軍の苦戦を受け、兵士をさらに徴収してウクライナに投入している。

こうした状況は、驚くには値しない。タイム誌への寄稿記事でも述べたが、問題は、国に制裁が課せられると、国民は国への忠誠心が強まる傾向があることだ。

今回の場合は、国民がロシア政府に対して圧倒的な支持を寄せることになる。調査会社スタティスタのデータによれば、プーチン大統領の支持率は、2023年1月時点で82%となっている(支持率は侵攻後に急上昇し、9月には77%まで落ちたが、その後また上昇している)。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ・編集=遠藤宗生

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