さらに日本よりも深刻なのがお隣の韓国だ。韓国統計庁が2月22日に発表した資料によれば、韓国の22年の出生率は0.78で、前年の0.81を下回った。経済協力開発機構(OECD)加盟国では最低の数字だ。ソウルに住む自営業の韓国人男性(50代)は「日本の出生率はまだ、1を上回っているじゃないか。我々に比べればずいぶんマシに見える」と語る。
韓国の少子化の原因を巡っては、不動産価格の高騰や社会制度の不備など、いろいろな指摘がある。なかでも、最も深刻だと言われるのが教育を巡る問題だ。韓国の学歴競争は「熾烈」の一言に尽きる。
子供は未就学児のころから、「学院(ハグォン)」と呼ばれる塾に通い始める。下校時間になると、学校の周りに黄色いバスが集まり始める。塾の送迎用バスだ。そこで、子供たちは毎晩、午後10時過ぎまで勉強する。子供を集めるために塾の競争も過熱し、地方自治体によっては「深夜から未明にかけての塾の営業禁止」という条例を定めているほどだ。
この男性には数年前に就職した長男がいる。長男はめでたく、最難関のソウル大を卒業した。男性は長男が小学校のころから、毎月200万ウォン(約21万円)の「私教育費」を投じてきた。この男性は「ソウル大の合格者の住所をみると、みなソウル・江南(カンナム)などに集中している。評判が良い学院があるところばかりだ」と語る。こうした地域は高級住宅街であることが多い。
男性の知人は、子供のために江南に移り住んだ。20坪(約66平方メートル)の小さなマンションだったが、毎月の家賃の代わりに大家に支払った「チョンセ」と呼ばれる保証金は20億ウォン(約2億1千万円)にものぼったという。