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2023.03.03 08:15

エンタメ王者ディズニーが明かす「心を動かす」核心とエンタメの行方

ウォルト・ディズニー・カンパニーAPAC代表 ルーク・カン

2023年、世界はどのように変わっていくのか。コロナ禍は沈静化に向かうも、地政学的不安は増し、経済はリッセッションの文字がちらつく。Forbes JAPAN2月号では、日本、そして世界で活躍するさまざまな業界のNo.1「36人」に「100の質問」を投げかけた。国際情勢、テクノロジー、ビジネス、金融など100の答えが今年の100の変化を示す。

エンターテインメントの世界はこれからどうなるのか。エンタメ王者企業であるウォルト・ディズニー・カンパニーAPAC代表 ルーク・カンが語った。


Q. 未来のエンターテインメントはどうなっていくのか? 動画配信サービスの群雄割拠は続くのか? 日本の消費者の特徴や傾向とは?

「エンターテインメントの本質は、“ストーリーテリング”にある。上質な物語を生み出し、うまく観客に伝え、どれだけ人の心を動かすことができるか。動画配信も映画もパークもグッズも、それを実現するためのエコシステムのひとつだと考えている」

そう語るのは、動画配信サービス「ディズニープラス」を含む、アジア太平洋地域(APAC)のメディア事業や映画ビジネスを統括する、ウォルト・ディズニー・カンパニーAPAC代表のルーク・カンだ。

一度愛したら、ずっと愛し続ける

カンは、APACにおけるこれからのコンテンツ戦略について、ディズニーやマーベル、ピクサーなどのグローバル・コンテンツに加えて、「ホワイトスペース(空白)」といわれる分野、つまり日本のアニメや韓国ドラマのような特定ジャンルやローカル発コンテンツへの集中的な投資が必要だと話す。

「なるべく新鮮で、観客を惹きつけてやまない強いストーリーテリングを確立したい。多様なブランドやコンテンツを有することで、多様な観客層にリーチでき、それがわれわれの強みになっていく」

この1年で、ディズニープラスにおけるアジア発のコンテンツの総時間は8倍に増加したが、日本の消費者にはどんな特徴があり、何が求められるのか。

「日本では特にディズニーブランドが愛される傾向にある。しかも、ファミリー層だけでなく、若い大人の女性(10代後半〜30代)に人気が高い点がユニークだ。日本の消費者はとても洗練されていて、彼らの関心を得るには非常に時間がかかるのだが、“一度愛したらずっと愛し続けてくれる”のが大きな特徴だと思う。作品に対しては、非常に高いクリエイティビティと品質が求められる」

動画配信サービス分野で同社は後発だが、売上成長率では国内1位(2021年に前年比86%増)。競争は激しくなっているが、「われわれは誰とも競争していない。新しい産業には競争が生まれるものではあるが、成功者は1人だけとは限らない。勝つか負けるかではなく、何人もが勝利できるものだと思っている」。

エンターテインメントの未来について、100年企業ならではの答えが返ってきた。

「物語で観客の心を動かすという核は、これからもずっと変わらない。ストーリーテリングの方法は、印刷した本から映画やラジオ、テレビになり、衛星放送や動画配信サービスへと変化を遂げてきたし、これからも新しいテクノロジーは次々出てくるだろう。しかし、その本質はずっと変わらないと信じている」


ルーク・カン◎バイアコム/MTV ネットワーク・アジア・パシフィックなどを経て、2011年韓国のマネージング・ディレクターとして入社。14年からグレーターチャイナのビジネスを統括し、17年には日本と韓国へ担当地域を拡大現在は、アジア太平洋地域のメディア事業や映画ビジネスを統括。

文=松崎美和子 写真=ザカリア・ザイナル

この記事は 「Forbes JAPAN No.102 2023年2月号(2022/12/23発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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