州議会上院のブレイズ・インゴリア議員が提出した法案は「Ultimate Cancel Act(究極のキャンセル法)」と名付けられ、州選挙管理委員会に対し、「過去に奴隷制や強制労働を提唱または支持していた」政党の届け出と地位を「直ちに取り消す」よう求める内容となっている。民主党は19世紀の南北戦争で奴隷制を支持していたが、その後、公民権支持に転換。現在では、米黒人有権者の大半が民主党支持者だ。
法案が可決される見込みは薄いが、新法として成立した場合、民主党は以前に同州で登録された他政党と「大きく異なる」名称の新党として再登録する必要がある。また、民主党支持者として登録している有権者は「無所属」となり、新政党に登録しなければならなくなる。
同州議会は共和党が多数派を占めているが、法案が他の共和党員からどの程度支持されているかは不明だ。ただ同州共和党のクリスチャン・ジーグラー委員長は数日前、地元テレビ局のニュース番組に出演した際、「われわれは、民主党員を全員落選させ、民主党員が立候補を考えることがなくなるまでアクセルを踏み続ける」と述べていた。
デサンティス知事は同州民主党を「死んで腐ったしかばね」と表現しているが、法案を支持するには至っていない。インゴリアは地元ラジオ局に対し、知事は法案の起草について知らされておらず、「法案が実際に提出されたことを知っているかどうかは分からない」と話している。
フロリダ州選管によると、1月31日現在、フロリダで民主党支持者を自認する有効登録有権者の数は490万人。一方の共和党支持者は530万人、その他の政党支持者は26万2815人、無所属は400万人だった。
インゴリアは「左派活動家はここ何年にもわたり、過去の言動を理由に人や企業を『キャンセル』しようとしてきた」と指摘。「この基準を使えば、同じ理由で民主党そのものをキャンセルしないのは偽善と言える」と主張した。
フロリダ州共和党はここ数カ月間にわたり、デサンティス知事が旗振り役となり、自党の方針に沿った一連の政策を推し進め、物議を醸してきた。これには、反対派が「Don’t Say Gay(ゲイと言うな)」法案と呼び批判していた「教育における親の権利法」や、同法に反対した米ディズニーが同州で運営するウォルト・ディズニー・ワールドの特別区廃止、図書館の本や学校での人種の扱い方を制限した教育関連措置などが含まれる。
2024年大統領選に立候補する可能性が取り沙汰されるデサンティスにとって、今月7日に開会する州議会は、共和党の方針に沿った政策をさらに推し進めることで出馬に勢いをつける機会となるとみられている。2カ月間の会期中に審議される可能性が高い法案には、免許なしで武器を隠し持つ権利を認めるもの、移民を制限するもの、ジャーナリストを名誉毀損(きそん)訴訟から守る措置を弱体化するもの、「ゲイと言うな」法で定められたLGBTQ教育制限を強化するものがある。
(forbes.com 原文)