スポーツの価値
「スポーツを通じた国際開発」という篠原の活動は世界的に見ても新しく、稀有な存在だ。オバマ財団がこの領域でのアジア太平洋地域で初選出したことは上述したが、ここに長く携わってきた篠原はいま、手応えを感じている。「国連でも、スポーツはSDGs達成の成功要因のひとつと示していて、その可能性に期待しています。しかし日本では体罰問題や男女格差などが未だその影を落とす状況です。ですが、私は変化を感じています。「プレー・アカデミー with 大坂なおみ」では、支援先が自発的に行動し、連携したイベントや勉強会を企画するまでになっています。地道に活動してきたことで芽が出てきたと感じているのです」
篠原自身、スポーツとそれに関わる人の持つ可能性を信じて疑わない。
「学生の頃、マイアミに留学する機会があり、ちょうどオバマ大統領のスピーチを聞く場面に遭遇したんです。移民政策についてでした。その印象が強く残ると同時に、今立っているマイアミという地が、スペイン語が広く浸透しカリブ海や中南米からの移住者も多く、オバマ大統領自身もアフリカ系のバックグラウンドを持ち、みんなが多様性でつながっている場所だと感じたのです。
そして、そのマイアミでは全米でも数少ない4大スポーツ(アメフト・バスケ・野球・アイスホッケー)の拠点となる場所で、それが根付いているんです。観て、楽しんで、応援することが多様な人たちをつなぐ“ジョイント”として、コミュニティでの“接着剤”としてスポーツの価値を見た思いがしました」
──オバマ財団 アジア太平洋リーダープログラムとは
ハワイ出身のオバマ元大統領は、これからの時代はAPACの発展が重要と考え、財団を通じて次世代の若者への支援と育成に尽力している。「変化は、普通の人々が関わり、関与し、団結してそれを要求するときにのみ可能である」。オバマ元大統領が考える哲学だ。
アジア太平洋リーダープログラムは、この哲学を基にして、毎年、強い価値観を持ち、倫理的、公正、協調的なアプローチでリーダーシップを発揮する若者を選び、自らの価値観をより深く実践するうえで直面する障壁を克服するためのスキル、ツール、コミュニティのサポートを提供している。
「私たちの共通の課題を解決するために、私たち全員が一歩ずつ前進していくことが必要だ」という、変革の力に対する信念が、オバマ財団のミッションの中心をなしている。篠原果歩は各国のリーダーたちと、さまざまなプログラムを共にしていく。