それも仕方がないことだ。顧客サービス担当者は、会社の代理人として質問に回答する中で、失礼な人や、不満を抱えた人、怒っている人、落胆した人に一日中対応する。これだけでも、精神を大きくすり減らす仕事だ。この職務にさらに「共感」を加えようと言われると、感情面での負担はさらに大きくなるように思えるかもしれない。
それでも、担当者を含め関係者全員の利益になる形で、顧客サービスモデルに共感を盛り込むべき理由は存在し、そうすれば顧客の満足度向上が見込める。以下に、その理由を紹介する。
1. 担当者のパフォーマンスが向上する
電話をしてきた顧客は、自分の感情について即座に何らかのヒントを発している。息切れして緊張していたり、細かな情報をついていけないほどの早口でまくし立てたりすることもある。こうしたヒントを察知して対応できる担当者は、顧客のニーズによりうまく対応できる。顧客対応のひな型を用意しておくことは、会話の取っ掛かりとしては効果的かもしれないが、顧客から「最近、愛犬を亡くしてしまって」と言われたり、背後で赤ちゃんが泣く声が聞こえたりした場合にどう対応すべきかは、ひな型からは分からない。
カスタマーロイヤルティー確立の重要性に焦点を置く品質管理ソフトウエア企業Maestro QA(マエストロQA)は、トレーニングや指導、データに共感を組み込むことを提案している。
そのためには、会社やチームにとって「共感とは何か」を定義する必要がある。共感を示す対応の例を示し、顧客とのやりとりやコーチングのセッションで共感を示す練習をしよう。
最後に、品質保証のスコアカードで共感を採点し、データを把握しよう。そうすれば、共感がチームのパフォーマンスに与える影響を公平に判断できる。
2. 社内の文化が強化される
共感は多くの場合、会社の上層部から始まる。経営陣は、顧客サービス担当者が毎日直面する状況に共感を持っているだろうか? そうした会社は、担当者向けの柔軟な方針やエンパワーメントの仕組みを用意しているかもしれない。会社が非常に厳格な方針を設けてしまっていると、担当者は顧客に対して例外的な対応をすることができない可能性がある。
担当者が、顧客体験改善のためにちょっとした例外的対応を取ることも許されていない状況は、誰にとってもいらだたしいものだ。共感力のある上司は、顧客サービス担当者が最も力を発揮するのは、自分が良い判断を下せると信じてもらえたときであることを理解している。