カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とハワイ・ケック天文台の天文学者は、過去数十年間にわたり、天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール「いて座A」(Sgr A)に向かって加速しながら引きちぎられていく奇妙なちりの雲「X7」を観測している。X7はスパゲティ化によって引き伸ばされ、その長さは今や2000億マイル(約3200億km)を超えている。
おそらくX7は今、ひどく絡まりあったパスタの塊のようになっているだろう。X7はSgr Aによって引き伸ばされている一方で、銀河の中心を170年かけて周回する軌道運動も続けている。
学術誌The Astrophysical Journalに掲載された論文の共著者であるUCLAのマーク・モリス教授(物理学・天文学)は発表で「天の川銀河のブラックホールが起こした強い潮汐力は、最終的にX7が軌道を1周するより前に引き裂いてしまうと予想している」と述べた。
ケック天文台が捉えた、2002~21年の間に起きたX7の変化(A. CIURLO ET AL./UCLA GCOI/W. M. KECK OBSERVATORY)
研究チームは、X7がSgr Aに最接近し、バラバラとなってのみこまれ始めるのは2036年頃だと推測している。その後、X7は劇的な爆発を起こす可能性があるという。
さらにX7は、太陽系の天体では考えられないほどの速さで動いていることが分かっている。研究チームは、Sgr Aの非常に強い引力によって、秒速約790kmという恐ろしい速さでX7が移動しているところを観測した。
天文学者たちは今後もX7の終焉を見届けるために観測を続けるとともに、その起源についても解明を試みる予定だ。
(forbes.com 原文)