FDAがこれまでにRSウイルスのワクチンを承認したことはないが、開発の試みは1960年代から続いてきた。
RSウイルスは一般的な呼吸器感染症で、典型的には風邪に似た軽い症例を示すが、重篤な肺疾患をもたらす場合もある。医療情報サイト「MedlinePlus(メディシンプラス)」によれば、最も感染しやすいのは子どもや高齢者、基礎疾患のある人だ。
米疾病予防管理センター(CDC)によれば、ほぼすべての子どもたちが2歳までにRSウイルスに感染し、ほとんどの症例は自然治癒する。
RSウイルス感染の流行期は冬だ。2022〜2023年のシーズンには、入院数10万件につき47.9件がRSウイルス感染によるものだった。また、2022年10月〜11月の症例数は12万6000件を上回った(数値は米国のもの)。
症状は鼻水、せき、熱、喘鳴(ぜいめい)、食欲減退、くしゃみなどだが、乳幼児では、むずかりや呼吸困難、活動低下のみが見られる場合もある。
公衆衛生改善に関する活動をおこなう非営利団体PATHによれば、現在臨床試験段階にある開発中のRSウイルスワクチンは11種あり、うち4種が乳幼児用に開発されている。
高齢者・乳幼児向けワクチン
Pfizer(ファイザー)は、自社のRSウイルスワクチンにより、高齢者の重症化リスクが86%減少したと報告している。2022年11月には、高齢者ではなく妊婦に対する予防接種の臨床試験結果を公表した。ファイザーは、高齢者と、妊婦への予防接種を介した乳児へのRSウイルスワクチン投与を目指している唯一の企業だ(妊婦に接種し、母体から胎児へ移行するRSウイルス中和抗体価を高めることを目的としている)。FDAは2022年12月、同社のRSウイルスワクチンに関する優先審査の申請を承認した。