ジョブズもベゾスも経験した「まさか」の意思決定 避ける仕組みは?

アマゾン創業者のジェフ・ベゾス氏(Photo by Elif Ozturk/Anadolu Agency via Getty Images)


“「自分たちの予想も信じられないことがよくわかりました。現実が予想をあまりに大きく上回っていて、我々もみなさんと同じように、ただ目を丸くして傍観するしかできずにいるわけですから」”*3

「App Store」が2008年に急成長を遂げた時のことだ。

ジョブズのような、先見性に基づき意図を持って市場を支配したかのごとく語られる存在であっても、潮目が変わるタイミングを予想することができず、「ただ目を丸くして傍観する」しかなかった。

結果的にアップルはプラットフォーマーとして覇権を握っていくが、それは必ずしもジョブズが意図した形やタイミングではなかったのだ。

同書の結論章のタイトルにも「だれもが傍観者」とある。この「傍観」という言葉は本書の根底に流れている中核的なメッセージだ。

変化があまりにも予測のつかないタイミングとインパクトで起こるので、事前に予知することができず、その変化を前にただ傍観するしかない──。
アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

アップル創業者の故スティーブ・ジョブズ氏(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)


では、その変化の前に等しく傍観せざるを得ないような時代において、私たちはどのような意思決定をしていけばいいのだろうか? これが、このコラムを通じて追求していきたいテーマだ。

まず、結論を書いておこう。

それは、この時代において重要な意思決定スタイルとは「多くの知恵を集めて、小さな意思決定を何回も繰り返す」ということだ。

これだけ聞けば、あまりにも平凡すぎてびっくりするだろう。でも実態はそうなのだ。

別の言い方をすれば、良い意思決定とは、「誰がいつどう決めたかよくわからない」ということだ。自分が決めたようでもあるが、誰かに決められたようでもある......。そんな抽象的で中庸的なものだ。

もちろん、最終的にゴーサインを出すのは、CEOであったり最終責任者であることは間違いない。

しかし、トップが独自のカリスマ性を生かし、全てを予見して一度に全てを決め切る、というよくある英雄的リーダーシップ・ストーリーとは全く異なるモデルが、今求められている。

予測不能の変化の前にした私たちの無能さを考えれば、「特定の個人による、一つの意思決定」に対する過度な幻想を拭い去る必要があるのだ。

まとめると、以下のようになる。

【意思決定の4類型】(1)1人で決め切る:カリスマ型(2)1人で決め続ける:密室政治型(3)みんなで決め切る:大衆投票型(4)みんなで決め続ける:創発回転型

【意思決定の4類型】
(1)1人で決め切る:カリスマ型
(2)1人で決め続ける:密室政治型
(3)みんなで決め切る:大衆投票型
(4)みんなで決め続ける:創発回転型

当然、「創発回転型意思決定」が良いといっても、言うほど簡単ではない。いや、むしろ難易度は高いはずだ。

本コラムでは、今後様々なケースを通じて、意思決定を「いかにオープンにしていくか?」「いかに回転数を上げていくか?」といった仕組み向上のための学びをデザインしていきたい。

連載:「意思決定」のための学びデザイン
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文・イラスト=荒木博行 編集=宇藤智子

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