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2023.03.03 08:45

「辛い、孤独」NBAスターも嘆く メンタルヘルス問題への対応策

NBAの誹謗中傷対応策 

NBAオールスター・ゲームが2023年2月19日、米ユタ州ソルトレイクシティで開催されたが、この際にマーク・テイタム副コミッショナー兼COOに話を聞く機会を得たので、NBAでは選手のメンタルヘルス問題について、どう取り組んでいるのか聞いた。

テイタム副コミッショナーは「我々は、メンタルヘルス問題を非常に深刻に捉えています」とした上で「デマー・デローザン(シカゴ・ブルズ)やケビン・ラブ(マイアミ・ヒート)など何人もの選手が、メンタル・ヘルス問題を抱えていると公にしており、NBA全体として取り組んでいます」と明言。

包括的なプログラム名こそ挙げなかったが、セキュリティグループを構築、チームやエージェントとも協力し、SNSにおける脅迫などもすでに監視していると明かした。

マーク・テイタムNBA副コミッショナー兼COO

マーク・テイタムNBA副コミッショナー兼COO


「リーグ、チーム、選手会そしてチームの地元も巻き込んだ協力体制を気づき、スティグマ(差別・偏見)の排除を進めています。レブロンがビリオン・ダラーズ(大金)をつぎ込んで自身の強靭な肉体をメンテナンスし維持しているように、選手の心の健康状態も確保しなければなりません。

そのため、選手の教育にもリソースを割いており早い段階で、育成のジュニアに対しても身体だけではなく、メンタルヘルスの重要性について説き、リーグではルーキーイヤーからプロ選手として(危機管理などの)トランジッション・プログラムを実施しています。

また選手に対してもスティグマを排除し、さらに(問題を抱える際には)、心の底を打ち明けて欲しいと働きかけ、チーム内にもコンサルタントなどのリソースを確保するように促しています」と育成段階の早期段階から、本問題については力を注いでいるとした。

選手に対する誹謗中傷については、ファンの側に問題がある。このためNBAとしては、さまざまな手段を駆使しスティグマ排除の呼びかけを行っている。リーグとしては具体的にどんな差別行為が許容されないのか具体例を示し、その代償についても明示し、それが犯罪であるとアリーナやスタジアムにおいてもメッセージを発信している。

テイタム副コミッショナーは「八村塁の尊厳を損なうような言動には、実力行使によりアリーナから排除したケースもある」と語った。このようにFIFAだけではなく、NBAも選手のメンタルヘルス問題についてはリソースを割き、教育・サポート体制の充実を図っている。

日本ではどのような対応策が取られているのか。

プロレスラーの木村花さんがバラエティ番組への出演をきかっけにSNSにて誹謗中傷が殺到。21年5月に自らの命を絶った。花さんの母・響子さんが民事裁判を起こしたが、日本のスポーツ界全体としてなんらかの対策に乗り出しているかと言えば、心もとない。

八村阿蓮に対する差別投稿についても、チームやリーグがなんらかの対策を講じたかという話も聞かない。日本のスポーツ界はビジネス面においても世界的な潮流に取り残される傾向にあるが、メンタルヘルスの対応にも遅れが見られる。2023年、こうしたマインドセットを変更し、対応が迫られる時期を迎えていると、FIFAやNBAの事例から痛感させられた。

文・写真=松永裕司

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