「世界の旅行者の間で、サステナブルを意識することはトレンドを超えて当たり前の考えになっています。旅行というのは人生に欠かせないものですが、旅行先でもサステナブルな取り組みを積極的に行うのが当たり前であるということが、世界中の旅行者を見ていると感じます」
そう語るのは、「リーマントラベラー」東松寛文。平日は広告代理店で働きながら、週末を活用して世界中を旅行。訪れた国は80カ国を超え、都市でいうと181都市に及ぶという旅の達人。そんな東松が、世界の旅行者のトレンドであるサステナブルな旅を気軽に体験できるとすすめるのが、オーストラリアのケアンズだ。
旅の最新トレンドをケアンズでは実践
「海外でみる多くの旅行者はマイボトルを持ち歩いているのが当たり前で、ホテルも観光事業者も、サステナブルに取り組んでいないところは旅行者に選ばれないという傾向があります。そんな中で、ケアンズという都市は世界のトレンドであるサステナブルの取り組みがだいぶ前から始まっていて、僕ら旅行者はそこに行くだけで最先端の旅のスタイルを体験することができるんです」オーストラリアの中でも熱帯に位置するクイーンズランド州北部にあるケアンズは、世界最大のサンゴ礁群であるグレートバリアリーフと、世界最古の熱帯雨林という2つの世界自然遺産を有することから、非常に高い自然環境保護意識が育まれてきた。
州としても2021年9月から使い捨てプラスチックの使用を原則として禁止しており、ケアンズ市街地の3箇所にあるホテル「クリスタルブルック・コレクション」では2018年のホテル開業時からペットボトルやアメニティボトルの使用削減に努めている。
ルームキーはプラスチックではなく木製、ハンガーはカーボン紙で作られ、提供する果物などの食べ物もそのうち80%はクルマで3時間圏内で採れたもの。電子化によるペーパーレスにも早くから取り組み、エコな移動を推奨すべく自転車を無料で貸し出している。
エコな旅行こそが上質で贅沢なもの
「ケアンズではサスティナブルな旅行を“エコ・ラグジュアリー”と呼んでいます。旅行者は飲食をし、移動をするものですが、旅行者としての行動を通じて環境保全に貢献できる、そんなエコな旅行こそが心を満足させるラグジュアリーなものであるという考え方が徹底されており、旅行者たちを惹きつけているんです」約1億3000万年前に形作られたという熱帯雨林に位置する、デインツリー国立公園のそばに位置する5つ星のホテル「シルキー オークス ロッジ」や、同じくデインツリー国立公園のなかに建てられたラグジュアリーなエコロッジである「デインツリー エコロッジ」では、自然との共存のなかで文字通りの“エコ・ラグジュアリー”を体験できる。
「グレートバリアリーフに行くにはツアーに参加するんですが、その参加費のなかには自然保護の税金もかけられていて無理なく環境保護に貢献できる。熱帯雨林の地域では先住民であるアボリジナルピープルに土地を返還し、観光地でありながら州と先住民の人々が共同で管理するという体制をとっています。自然環境だけなく、現地の人の伝統的な文化を尊重し、保護するというSDGsの取り組みも実践している点がクイーンズランド州では進んでいるんです」
気球に乗ってゆっくりと朝もやのなかに立ち上がる市街地を眺める遊覧飛行や、ヘリコプターから眺めるグレートバリアリーフ。特にヘリから眺める巨大なサンゴ礁は「地球が生きていることを実感できる素晴らしい体験」と、世界中の絶景を眺めた東松も絶賛。
羽田空港から7時間で行ける常夏
これまで80カ国を訪れた東松が、なぜ週末の貴重な休日を海外旅行に費やしてきたのかというと、そこには「最高の休日」があるからだという。「移動時間も、寝ている時間も、すべての時間で非日常を感じられるのが旅、特に海外への旅行だと思っているんです。平日に一生懸命働くことが日常だとしたら、日常でできない非日常を感じることが僕は休日の醍醐味だと思いますし、その休日に非日常が詰まっていればいるほど、最高の休日だと考えています。その点でケアンズはとてもわかりやすい非日常である世界自然遺産が2つあって、ゆっくり自然を眺めたり、積極的にアクティビティに参加したりするという、気軽に体験できる非日常がある点が素晴らしいと思っています」
「しかもこれは意外と知られていないんですが」と東松が話すのは、ケアンズの気候の良さだ。南緯16度という熱帯に位置するケアンズは、日本の冬にあたる8月でも平均最低気温が18℃(最高気温平均は26℃)。かつ、夏にあたる1月、2月でも平均最高気温は31℃。冬でも泳げる常夏のケアンズは、一年を通して非常に過ごしやすい。
かつ日本との時差は通年で1時間しかなく、現在運航の直行便に加え、2023年6月28日にはケアンズ線としては史上初となる羽田空港からヴァージン・オーストラリア航空の直行便が新規就航し、毎日運航予定。ちなみにフライト時間は約7時間30分。ますます日本から行きやすい旅行先になっている。
食が充実するケアンズのポテンシャル
「これはケアンズに行ってびっくりしたんですが、食材が豊富なんですよ。主に近郊のアサートン高原が生産地のローカル野菜もたくさん採れますし、ケアンズ産のマンゴーは日本まで取り寄せて食べたくなるくらい絶品。海が近いので海産物も採れますし、もちろんオージービーフもある。世界中あちこち旅行しましたが、やっぱり食材が豊富なところは美味しいご飯が食べられるお店がたくさんあるんです。その点、ケアンズはポテンシャルがとても高い」ニューヨークで修行したシェフが供するオーストラリア牛によるNYスタイルのステーキが食べられる「CC’S BAR&GRILL」や、サスティナブルな地域の食材を使用したモダン・オーストラリア料理の老舗「OCHRE RESTAURANT」といった本格的なレストランがケアンズ市街地には充実。
さらに、イタリア移民が多いことから本格イタリアンのレストランも多く、熱帯でコーヒーも採れることから、カフェの激戦区でもある。地域で採れたホップや麦芽、そして熱帯雨林の清流の水を使う、ローカルにこだわったブルワリー「HEMINGWAY’S BREWERY」や、クラフトジンの蒸留所までも。海岸沿いではナイトライフも充実し、ルーフトップバーでゆったりと時間を過ごすこともできる。
畜産から農業に至るまで、地域の生産者を保護する地産地消への取り組みの意識の高さが、東松を驚かせた食文化の充実に繋がっている。もちろん、地域の食材を活用することによるCo2削減という効果もある。
グレートバリアリーフのサンゴは、現在過去36年のなかでもっとも良い状態にあるという調査の結果も発表されており、ケアンズではますます環境保護への意識が高まっている。豊かな自然に触れながら、最先端の旅行スタイルを実践できるケアンズは、日本に1番近いオーストラリア。金曜日の夜9時の飛行機に乗れば、土曜日の朝には人懐っこいオージーがフレンドリーに歓迎してくれる。心を充実させる、エコ・ラグジュアリーな旅を体験するには、ケアンズはまさに今が旬の旅行先だ。
ケアンズ&グレートバリアリーフ
https://www.queensland.com/jp/ja/places-to-see/destinations/cairns-and-great-barrier-reef