SM社は、イ・スマン(Lee Soo Man、1952年生まれ)という人物が立ちあげた会社で、社名も彼の名前に因んだものである。
イ・スマン氏は、韓国の名門ソウル大学出身のエリートだが、1972年に歌手デビューし、80年代までは歌手兼テレビでの司会をしており人気者だった。だが、突如アメリカへ留学して、コンピュータサイエンスの修士号を取得し、帰国後にSM社を立ち上げた。 同社は、韓国の90年代から始まるK-POPブームの火付け役となった。
またイ・スマン氏は、会社経営者としてより「アイドル製造機」、つまりアイドルをプロデュースすることに能力が長けていた。日本ではあまり知られていないが、韓国で絶大な人気を誇ったH.O.T.(男性アイドルグループ)やSES(女性アイドルグループ)、そして日本でも有名な神話(男性アイドルグループ)や東方神起を手掛けた。
そしてその後、彼に倣ってアイドルをプロデュースする会社が雨後の竹の子のように増え、韓国にアイドル全盛時代が到来した。その頃、まだのちにBTSをプロデュースするバン・シヒョク氏(ソウル大学の後輩)は、まだ頭角もあらわしていなかった。
K-POPを牽引する3大エンタメ会社
イ・スマン氏は当初からアイドルのグローバル化をめざし、多国籍でメンバーを構成することが多かった。これも現在のK-POP世界では一般的になっている。2012年、EXOをデビューさせアイドル市場に本格的にユニバース文化を取り入れ、トレンド化させたのもイ・スマン氏だといえる。こういった韓国のアイドルにおけるユニバースづくりは、現在のBTSでも受け継がれている。
そのSM社がなぜ揺れているのか。イ・スマン氏は、2021年に交際中の女性に50億ウォン(約5億円)相当のマンションを贈与したことでニュースになった。それが17歳年下の外信記者ということでもさらに話題になった。
しかしそれより、2021年、SM社の持ち株の約19%を売却すると発表したことが、現在のSM社が揺れるきっかけとなったと言える。
K-POPの第1世代は、イ・スマン氏が率いるSM社が飛びぬけて業績が良かったのだが、現在では他のエンタメ会社に若干押されている感じもある。そこで、SM社の部分売りが持ち出されたのだ。