SM社は、イ・スマン氏が総括プロデューサーを務め、日本で言うと彼はジャニーズ事務所のジャニー喜多川さんのような人物である。実際、会社を立ち上げた当初はジャニーズ事務所のアイドル・システムをベンチマークしている。しかし、イ・スマン氏は同社の株を持っているものの、すでに会社経営からは外れており、ライク企画(100%イ・スマン氏の会社)という別の会社を立ち上げていた。
だが、株の売却条件として、自分を役員として採用して、年俸100億ウォン(約10億円)を要求したことで、まとまりかけた商談もつぶれてしまった。そして、進展がないまま2021年が過ぎた。
そして、2022年に行動主義ファンド「アルラインパートナーズ資産運用」という、できたばかりのファンド会社がSM社の株を1%ほど確保した。そして、SM社の株価が低評価されているとし、その要因としてイ・スマン氏がライク企画を通じてプロデュース料をもらいすぎているからと主張した。
それだけでなく、SM社に対してライク企画との契約を打ち切らないと、商法を盾にして同社の監査人を交替させると宣言し、ファンドの小口株主の委任状を集め始めた。
実際、2022年の報道によると、ライク企画はSM社から21年間で1741億ウォンをロイヤルティーとして受け取り、同社の年間利益の最大46%の顧問料を受け取ったという。さらに、イ・スマン氏は自分の趣味なのにSM社の経費でEMOSというブランドのワインをつくったり、会社経営とはかけ離れたことをして非難されたりもした。
結局、アルラインパートナーズ資産運用の働きかけで、2022年10月、SM社とイ・スマンは、ライク企画との契約を打ち切ると発表した。
そして、2023年1月、イ・スマン氏の妻(故人)の甥であるイ・ソンスSM社代表取締役がアルラインとともに、同社の支配構造を改善すると発表し、イ・スマン氏の息のかかった役員を排除し、プロデュースもこれまでのイ・スマン独断体制から数人のプロデューサーが担当するマルチ体制に変えるとした。
しかし、アルラインは1%ほどしかSM社の持ち株がないため、実質はIT企業カカオが9.05%を取得することになっていた。
これらは、イ・スマン氏にとっては寝耳に水であった。自分の同意のない決定は違法だとし、訴訟する旨を明かした。