アジア

2023.02.27 15:30

失踪した中国のハイテク投資家は「当局の調査に協力中」

安井克至

Getty Images

香港市場に上場する投資銀行「チャイナ・ルネッサンス・ホールディングス(華興資本)」の創設者で著名投資家のバオ・ファン(包凡)は現在、中国当局の調査に協力していると、同社は2月26日夜遅くに証券取引所に報告した。

華興資本は、今から約10日前の16日に、同社の会長兼CEOのバオが失踪したことを証券取引所に報告したが、その後、初めて彼の動向が明かされた。「我々は、バオがどこにいるかを把握し、どのような状況に置かれているかを確認しようとしている」と同社は述べ、業務は通常どおり継続していることを改めて強調した。また、当局からの要請を受けた場合は、同社も調査に協力すると付け加えた。

華興資本の創業者であるバオは、Morgan Stanley(モルガン・スタンレー)とCredit Suisse(クレディ・スイス)に勤務した後の2015年に同社を設立した。彼は、2015年のタクシー配車サービスのDidi Dache(嘀嘀打車)と Kuaidi Dache(快的打車)の合併や、同じく2015年のフードデリバリーMeituan(美団)とDianping(大衆点評)の合併などの注目の取引を手がけたことで注目を集めた。チャイナ・ルネッサンスの2022年上半期の売上高は8780万ドル(約118億円)で、前年比40%減だった。

フォーブスは、華興資本の担当者にEメールでコメントを求めたが、現時点で回答は得られていない。バオの突然の失踪のニュースを受けて、同社の株価は17日に約30%近く急落していた。また、多くのハイテク企業の成長を減退させた約1年にわたる政府の監視の強化から脱したばかりの中国のインターネット業界に警戒感が広がり、投資家はアリババやテンセントなどの大手の先行きを懸念している。

中国では近年、著名な企業幹部の失踪が相次いでいる。2015年12月には複合企業「復星国際」の創業者で会長のクオ・クアンチャン(郭広昌)が行方不明になり、数日後に再び姿を現した。また「中国のトランプ」の異名を持つ不動産業界の富豪のレン・ジチャン(任志強)は、2020年に習近平を批判した後に数カ月間行方不明となり、その後、汚職容疑で18年の禁固刑で収監された。

アリババの創業者のジャック・マー(馬雲)も、中国の金融規制制度を批判した後に数カ月間姿を消していた。同じく中国の投資会社であるSeazen Group(新城発展)も2月10日の提出書類で、副会長のQu Dejunが失踪したと報告している。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

ForbesBrandVoice

人気記事