メタは23日に発表した報告書で、タスやスプートニクといったロシア国営の通信社のフェイスブックやインスタグラムでの活動が過去1年間で激減し、コンテンツ量が少なくなったと説明。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の盟友で、悪名高い「ボット工場」企業のインターネット・リサーチ・エージェンシー創業者であるエフゲニー・プリゴジンについても、メタが会社のかなりの数の偽アカウントを追跡して削除したという。メタのセキュリティ政策責任者ナサニエル・グライシャーは「われわれは世界のどの脅威アクターよりもロシアによる影響力工作を見つけ出して暴いてきた。その結果、ロシアは活動の一部を当社のプラットフォーム外へ移した」と述べている。
1年前の侵攻開始から数日後、メタはロシアの国営メディアのコンテンツがユーザーのニュースフィードに表示されないようにした他、ロシアの情報戦の一部とみられるアカウントが同社のSNSで広告を出したり、利益を得たりできないようにする措置を取った。
結果、ロシアのメディアは現在、Telegram(テレグラム)やTikTok(ティックトック)といった他のプラットフォームに目を向けているとグライシャーは指摘する。フォロワーに対し、他のプラットフォームでの公式アカウントをフォローするように公然と促しているメディアもあるという。
英国の元副首相でメタの国際問題担当社長のニック・クレッグによると、偽情報を秘密裏に拡散しようとするロシアの試みは、一部が阻止されてはいるものの、急増しているという。
「こうした活動は(強盗が陳列窓を壊して商品を盗む)ショーウインドウ破りに似ており、サイトを自らのコンテンツで埋め尽くそうとして、当社のプラットフォーム含めさまざまなソーシャルメディア上でおびただしい数の偽アカウントを使用しいる」とクレッグは説明。「この秘密裏の活動は攻撃的かつ執拗で、報道機関を装った何百もの新しいドメインを開設するなど、明らかにインターネット上の弱点を探っている」とも指摘した。
グライシャーは、偽のコンテンツでソーシャルメディアを無力にしようとする試みは「ロシアの洗練された秘密影響力工作というよりも、スパムに近い」としている。「その膨大な量と質の低さから、実行者の用意が不十分で、可能なあらゆる方法に訴え性急に影響を与えようとしたことがうかがえる」
オンライン上の偽情報を追跡しているソーシャルメディア分析企業Graphika(グラフィカ)が発表した報告書もメタと同様の結論に達しており、ロシアが自国民のフェイスブックとインスタグラムの使用を制限したことも影響したと指摘している。グラフィカによると、昨年8月下旬には1日当たりの投稿量は前年同日比43%減、エンゲージメントは同80%減となった。その後、使用状況はほとんど増減していない。
グラフィカは「この分析結果は、ソーシャルメディアプラットフォームが、あからさまな影響力工作を行う者のリーチを制限する上で大きな影響を与えることができることを強く示している」と説明。一方で、検閲の可能性について懸念を示し、「同じ制限が他のアカウントにも適用される可能性があり、このような強力なツールをいつ、どのように使用するのかについて重要な問題を提起している」と指摘した。
(forbes.com 原文)