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2023.02.28

人工知能が切り拓く金融サービスの世界

AIが銀行を揺るがす(Getty Images)

金融サービスの会社を経営していて、デジタル変革を推進したいのであれば、具体的に何を変革する必要があるのかを決める必要がある。Zest AI(ゼストAI)の顧問弁護士であるテディ・フロは「正直なところ、関係ない分野があるのでしょうか?」という。「金融サービス業界は、多くの点で他の消費者中心の業界より大きく遅れています」

すべての変革のゴールはただ1つ「お客様に届くこと」つまり銀行やノンバンクを問わず、顧客との関係をより豊かにすることだ。「もし全員が公平に資金にアクセスできないのなら、何も良い方向には変えられません」とフロはいう。「信用に関する判断は、公正かつ包括的で、その人物のより大きな全体像を考慮した方法で行われるべきです」

以下に、金融サービスへのより公平なアクセスを保証するために、AIが役立てる局面を紹介する。

1. 支店不要のパーソナライズ

銀行が対面式の支店を縮小し続ける中で、AIはパーソナライズを維持するのに役立つかもしれない。Launch Consulting Group(ローンチ・コンサルティング・グループ) のシニアパートナーでモダンファイナンス部門責任者のシャーリーン・コールマンは「皮肉なことに、AIは消費者や中小企業経営者の信頼を築くパーソナライズされた体験を再定義し、回復するのに役立つのです」と語る。「例として、AIで駆動されるパーソナライズされた会話インターフェースや生体プロファイルがあります。これは弱い立場の消費者が遅延料金や柔軟性のない支払いスケジュールに追われて負債の罠に落ち込むのを回避するのに役立つことが期待されています」

2. より多くの情報を得てリスクを判断する

Eigen Technologies(アイゲンテクノロジーズ)のCEOで共同創業者のルイス・Z・リュー博士は「リスクと資本配分について、適切で十分な情報に基づいた意思決定を行える能力」のおかげで、AIは金融災害の防止に役立つと述べている。「AIを活用することで、金融機関は意思決定プロセスをより正確に、効率的に、そして成功へと、真に変革を進めることができるようになります」。リューは、多くの金融機関が「利用可能なデータのわずか10%に基づいて、リスク、資本配分、引受の決定を行っています」という。「通常これは、必要なデータにアクセスするためのコストが高すぎるか、あるいは難しすぎることが原因です。このプロセスにAIを導入することが、成果の向上に大きな役割を果たします。AIの活用により、さまざまな組織が、これまでアクセスできなかった90%の関連データにアクセスして活用できるようになり、より多くの情報に基づいたより良い意思決定ができるようになってきました」

3. 不正行為を削減または防止する

リューはまた、AIが「マネーロンダリングなどの不正行為に取り組み、削減するための新しい世界を切り開きます」と続ける。「これにより、金融機関は取引の検証、セキュリティの強化、脅威への対応を行うことができます」AIの活用例として、Searce(シアース)のシニアディレクターのブリンダ・クルジェーカーは「企業はAIを活用して、毎日大量のクレジットカードや電子決済の取引を監視し、購買行動の変化を検知し、不正行為に対処するプロセスをより合理化して私たちを守っているのです」という。
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翻訳=酒匂寛

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